第5話 欠陥奴隷は買い物をする
串肉を食べ終えた俺は近所のポーション屋に赴いた。
回復用のポーションを使って全身が痛みを改善するためだ。
ガイナにやられた傷が思ったよりも酷い。
ポーションはそれなりに高価だ。
いつもみたいに勝手に治るのを待ってもいいが、金には多少の余裕がある。
せっかくなら使ってもいいだろう。
店内に入ると、奥で店主が眠たそうに座っていた。
俺のことを一瞥するも興味がなさそうだ。
身なりからしてひやかしだと思われているのだろう。
店内にはいくつもの棚が並んでいた。
そこに種類別にポーションが陳列されている。
俺は簡単な文字だけ分かる。
説明付きの板を睨みながら巡回し、回復用のポーションを発見した。
回復ポーションには何種類も置かれていた。
細かいことは分からないが、価格にかなりの差がある。
使っている素材や、効果の違いだろうか。
盗難対策で高い商品は陳列していないのだろうが、それでも全体的に価格が高めだった。
俺は財布を確認する。
自前の分とガイナから奪った分が入っていた。
まだ何日か生活できるだけの金額が残っている。
ただ、あまりに高額なポーションを買うと、一気に無くなってしまう。
少し迷った末、俺は最も安い回復ポーションを選んだ。
贅沢の良さを知ったものの、ここで浪費すべきではない。
高価なポーションも気になったが、差額で美味い食事が買える誘惑に勝てなかった。
そのまま会計に向かおうとした俺は、途中で足を止める。
ポーションとは違う棚が目に付いたからだ。
色鮮やかな植物に加えて、何かの目や爪や毛などが小さな瓶に入れて売られている。
店主に訊いたところ、調合の材料だという答えが返ってきた。
植物以外は魔物の部位が大半らしい。
(これも死体になるのか?)
植物はともかく、魔物の部位は死体ではないか。
とにかく試してみるべきだろう。
とは言え、ここで瓶を開けて直接触れるのは難しい。
店主は俺に注目している。
盗まれないように警戒されているらしい。
できれば購入せずに試したかったが、この状況では不可能である。
俺はいくつかの調合素材とポーションを持って店主のもとへ向かった。
会計を済ませて店の外に出る。
調合材料のせいでかなりの出費になってしまった。
それでもスキル取得の機会だ。
逃すわけにはいかない。
さっそく店の脇に移動して、小瓶から取り出した調合素材に触れていく。
>スキル【痺れ毒】を取得
>スキル【熱探知】を取得
>スキル【寒冷耐性】を取得
>スキル【水中呼吸】を取得
>スキル【自然治癒】を取得
>スキル【休眠】を取得
なかなかの成果だった。
どれも人間からは手に入りづらい魔物特有のスキルだ。
数種の魔物素材を買った甲斐はあったようだ。
戦闘能力に直結するスキルは少ないが、決してハズレはない。
収穫としては上々だろう。
ついでにガラス瓶に入った回復ポーションを飲む。
独特の苦みに酸味もあった。
腐っているのではないかと疑ってしまうが、きっと薬草由来の味だろう。
すべて飲んだところで特に変わった感じはなかった。
強いて言うなら、身体の痛みが和らいだ気がする。
すぐに大きな効果は出るわけではないらしい。
早く傷が治るのを楽しみにしておこうと思う。