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欠陥奴隷の英雄偽譚 ~レベル上限のある世界をスキル強奪チートで這い上がる~  作者: 結城 からく


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第4話 欠陥奴隷は贅沢をする

 翌朝、俺はいつも使っている廃屋で目覚めた。

 身体は痛む上に血だらけだが、気持ちの良い朝だ。


 ここは貧民街の端で、治安はまだ良い方だった。

 臭いが酷く、たまに死体も落ちている。

 それでも力を持たない人間にとっては安全地帯には違いない。

 俺もここを愛用する一人だった。


 まあ、近いうちに出ていくかもしれない。

 スキルで察知能力が飛躍的に向上し、不意打ちを食らう可能性が減った。

 他の能力も高くなれば、もっと堂々と行動できるので、ここで生活する必要性も薄れてくる。


 早く英雄になりたいものだが、その前に普通の暮らしをしたい。

 最底辺の生活はもう懲り懲りだ。

 常に誰かに怯えて、蔑まれる日々には飽きた。

 せっかく逆転できるスキルを得たのだから、そういった人生を望んでもいいだろう。


 俺は全身の血を洗い落として、汚れの少ない服に着替えた。

 そのまま廃屋を出て貧民街を抜けると、一般市民の居住区へと赴く。


 ここは貧民街と隣接しながらも明るい場所だった。

 人々は俺達のことをまるで汚物のように認識しており、うろついていると兵士に注意される。


 居住区の子供達は、貧民街には近付かないように躾けられていた。

 実際、子供が貧民以外の住人に攫われることは多い。

 攫われた子供の末路を目撃したこともあった。


 貧民街とはそういう場所なのだ。

 街全体の悪を集約している。


 俺は大通りにある市場へと向かった。

 立ち並ぶ露店は雑多で、そのそばを人々が行き交っている。

 滅多に訪れることはないが、相変わらず活気に満ちた場所であった。


「おっ」


 俺は目に付いた露店に立ち寄り、そこで焼きたての串肉を買った。

 良い匂いに釣られてしまったのだ。

 いつもなら絶対に買えない価格だが、今の俺はガイナから奪った金を持っている。

 無駄遣いはできないものの、多少の余裕があった。


 串肉を買った俺は近くの広場へ移動した。

 人混みを避けて端に座ると、良い匂いの肉にかぶりつく。

 口の周りを汚しながら噛んで飲み込む。

 すると、涙が溢れてきた。


「美味い……」


 手を震わせながら串肉を食べ進めていく。

 これほどの味とは。

 今までの食事が悪夢のように思えてしまう。

 盗もうとしてもすぐに見つかり、袋叩きにされるので知らなかった。

 こうして堂々と食えることに幸せを感じる。


 俺はあっという間に完食し、その足で再び同じ露店へと向かった。

 今度は二本の串肉を購入する。

 両手に握って堪能して、またもや幸せを噛み締めた。


 その途中、俺はふと口を止める。

 残る僅かとなった串肉を見つめた。


(よく考えると、これも死体なのか?)


 味に夢中なって忘れていた。

 この肉は死体を焼いて味付けしたものである。

 つまり俺の【死体漁り+】の効果対象なのではないだろうか。

 閃いた俺は、さっそく指先で串肉に触れた。



>スキル【草食】を取得



 予想通りだった。

 肝心のスキルはあまり役に立たなさそうだが、この結果は大きい。

 食べ物でも肉や魚辺りからはスキルが得られるということだ。

 美味い上に強くなれるとは、なかなかに贅沢であった。


 やはり金があるとは素晴らしい。

 何でもできる。


 俺はかつてない万能感を覚えていた。

 しかし、調子に乗りすぎてはいけない。

 たくさんのスキルを得たものの、まだまだ俺は弱い。

 引き続き慎重に行動すべきだろう。

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