第38話 欠陥奴隷は冒険者になる
俺は渡された羊皮紙を確認する。
そこには試験に関する評価内容が載っていた。
最も目立つ場所には、等級も記されている。
「七級……」
「あら、私は六級ね」
隣でサリアが呟く。
それを聞いた俺は意外に思い、反射的にギルドマスターを見た。
視線の意味を察した彼は淡々と反応した。
「不満かな。個人的には正当な結果だと思っているがね」
「サリアが低すぎないか?」
「新人冒険者は、どれだけ成績が良くても四級から始まるのだよ」
「それなら四級が妥当だと思うが……」
サリアほど強い人間はいない。
熟練の冒険者だろうと一蹴できるだろう。
それなのに六級とは不可解であった。
嫌いだから評価を下げたとしか思えない結果だ。
もっとも、ギルドマスターには言い分があるらしい。
彼はサリアを一瞥して説明する。
「試験中、サリアは怠慢とも言える行動が目立っていた」
「それは俺を鍛えるためで――」
「何度も言うが果実の回収は試験だ。君達の事情など関係なく、その行動の可否を判断させてもらう」
ギルドマスターは毅然とした態度で述べる。
そこまで言われると反論できなかった。
「君の鍛練目的という点を加味しても、サリアの行動は良くなかった。魔術の力押しが目立って、全体的に雑だったな。戦闘能力は十分だが、冒険者としての適性は決して高くない」
「厳しい意見ねぇ。私にそんなことまで求めるの?」
「冒険者になりたいのだろう。この界隈では新人なのだから、真摯に聞いておくといい」
「はーい」
サリアは気だるそうに返事をする。
それほど不満そうではない。
ギルドマスターの説明を聞いて納得したのかもしれなかった。
或いは冒険者の等級にそこまで興味がないのか。
「ルイス、君は悪くなかった。まだまだ不安定だが、その場における最適な選択ができていたね」
「そ、そうか……」
「君ならすぐに昇級するだろうな。期待しているよ」
ギルドマスターが俺の肩を叩いて笑う。
なぜか評価されているらしいが、よく分からない。
現状、サリアの方が何十倍も有能だろう。
それはともかく、話が終わった雰囲気だった。
用事も済んだところで、俺達は部屋を出ようとする。
「そうだ、言い忘れていた」
扉に手をかけたところでギルドマスターが呟いた。
「何だ?」
「果実の守護者――あのゴーレムは強かったかな。まさかサリアではなく、君に壊されるとは思わなかったよ」
「……まさか、ゴーレムはギルドが用意したのか?」
「その通り。認定試験のうち最難関の敵だが、よく倒せたものだと感心したよ。設計に携わった職員も悔しがっていたな」
ギルドマスターが愉快そうに種明かしをする。
だからゴーレムのスキルの中に【手加減】があったのだ。
新人冒険者を殺さないように設定していたに違いない。
ただ、あの打撃をまともに受ければ死んでいた気もする。
ギルドマスターは最難関の敵だと言ったので、試験を受ける者によって、あそこで現れる魔物は変更されるのかもしれない。
ようするに死ぬような冒険者にゴーレムは使わないのだ。
サリアがいたことであのゴーレムになったと考えると、理解は簡単であった。
(まあ、冒険者になれたからいいか)
なんだか策にはまった感覚だが、目的は達成できた。
強力なスキルも大量に取得したのだから、文句もなかった。




