第24話 欠陥奴隷は試験を課される
サリアの記入を待つ間、ギルドマスターが棚を漁る。
彼が取り出したのは、古めかしい腕輪だった。
微弱ながら魔力が循環しており、どうやら魔道具の類らしい。
ギルドマスターは腕を俺に渡す。
「君にはこれを進呈しよう」
「これは?」
「隠蔽の腕輪だ。ステータスの一部を誤魔化せる。君の場合、スキル欄を隠すべきだろう」
ギルドマスターの説明を聞いて納得する。
彼は、俺の不自然なスキル欄を心配してくれているらしい。
第三者から余計な詮索をされないように、腕輪をくれるようだった。
サリアやギルドマスターのように他者のステータスを視認できる者は珍しいが、まったくいないわけでもない。
そういった人間の目から逃れさせるのが目的だろう。
しかし、隠蔽系の魔道具と言うと高価な印象がある。
世界の法則を誤魔化せるのだから当然だろう。
ちょっとした財産と言っても過言ではないと思う。
普通なら躊躇うところだろうが、貰えるのなら貰うしかない。
ギルドマスターが進呈すると言ったのだ。
ここは遠慮なく受け取るのが筋だろう。
さっそく俺は隠蔽の腕輪を装着してみた。
ステータス欄を確認すると、各スキルの表示設定を変更できるようになっている。
ここで他者から見れるステータスを改竄できるようだ。
少し考えた結果、【剣術】や【警戒】といった無難なスキルのみを公開しておくことにした。
まったくスキルがないのも考え物だ。
これくらいなら違和感もない気がする。
顔見知りは不審がるかもしれないが、隣にサリアがいるのだ。
今更、細かい点を気にすることはないだろう。
腕輪の性能を理解しているうちに、サリアの記入が完了した。
ギルドマスターは職員をよびだして用紙を手渡す。
しばらくすると職員が二枚の紙製のカードを持ってきた。
ギルドマスターはカードを指しながら説明する。
「現在の君達は仮登録の状態だ。これから認定試験を受けてもらい、その結果次第で正式な登録が完了する」
「試験……」
「冒険者の適性を見る試験だ。そこは誰であろうと特別扱いしない。たとえ魔女であってもだ」
「任せてよ。ちゃっちゃと合格しちゃうんだから」
サリアが自信満々に言うと、ギルドマスターは意地の悪い顔をした。
「――楽しみにしているよ」
その呟きを聞いた俺は嫌な予感を覚える。
(一筋縄ではいかないんじゃないか?)
純粋に応援してくれているわけではない。
きっと何か裏の意味があるのだろう。
害意は感じられないので、命を脅かすような罠ではないと思う。
真意は不明だが、どのみち気を引き締めた方がよさそうだ。




