第22話 欠陥奴隷は打ち明ける
ソファに座るのは、白い髭の男だった。
老人というには少し若々しい。
だいたい五十歳くらいだろうか。
背筋がしっかり伸びており、体格もかなり大柄だった。
何より俺達を見据える目が鋭い。
睨まれているわけではないが、視線だけで相手を緊張させるだけの圧が込められていた。
強者特有の雰囲気だろう。
種類はまるで異なるが、サリアも似た瞬間を見せる時がある。
(この男がギルドマスターか)
役職に相応しい風貌であった。
俺なんて絶対に敵わない存在だ。
サリアはギルドマスターの対面のソファに座った。
特に咎められないので俺もそれに続く。
ギルドマスターは俺達を交互に見ると、訝しげに発言する。
「魔女サリアと……誰だ?」
「ルイス。欠陥奴隷だ」
「ほう、君が噂の最弱か。それにしては所持スキルが異常だが」
知られていない前提で名乗ったが、なぜか通じてしまった。
サリアの時もそうだった。
欠陥奴隷の名は意外と知られているらしい。
たぶん常識外れの弱さが原因だろう。
物珍しいから認知されているに違いなかった。
「ルイス君の秘密にすぐ気付いちゃうなんて、さすがはマイケルね。慧眼は衰えていないようで安心したわ」
「君の死を見届けるまでは、安心して墓に埋まれないものでね」
「あはは、毒舌も昔のままねぇ」
サリアとギルドマスターは慣れた調子で話す。
てっきりさらに空気が張り詰めるものかと思いきや、案外ゆったりとしていた。
(知り合いなのか?)
そんな俺の疑問を察したのか、サリアが説明する。
「マイケルとは毎日のように殺し合った仲なのよ。可愛い私に夢中だったみたい」
「君ではなく、君にかけられた懸賞金に夢中だったな。それと魔女を殺したという名誉も欲しかった」
ギルドマスターが静かに補足を挟む。
サリアと毎日のように殺し合うとは、想像するだけで恐ろしい。
正気の沙汰ではない。
懐かしむ二人を見るに、嘘ではないだろう。
この街のギルドマスターはかつて凄腕の賞金稼ぎだと聞いていたが、その噂は本当みたいだ。
(仲が良さそうだな)
殺し合った仲とは言え、険悪な感じではない。
ギルドマスターに呼び出された時はどうなるかと思ったが、これは穏便に話が進むかもしれない。
密かに期待していると、ギルドマスターが咳払いをした。
彼は葉巻をくわえながら冷淡な眼差しを覗かせる。
「冒険者登録をしたいとのことだが、本当の目的は何なんだ? 君のことだ、別の目的でもあるのだろう」
「それが今回は裏がないのよねぇ。ルイス君と一緒に英雄を目指すだけだから」
「――何?」
ギルドマスターが僅かに驚きを見せる。
予想外のことだったらしい。
葉巻を胸ポケットに戻しながら念押ししてくる。
「それは本当か?」
「ああ。英雄の前段階として冒険者になりたい。サリアも同じだ」
「ふむ……」
眉を寄せたギルドマスターは、テーブルを睨んで思案する。
次いで俺達を注視した。
一言も発さずに観察して、何かを見極めようとしていた。




