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第19話 欠陥奴隷は冒険者を志す

 食事を終えた俺達は隠れ家を出発した。

 貧民街を抜けて街の中央部へと向かっていく。


 行き先は冒険者ギルドだ。

 今日はそこで登録を行う予定であった。


 冒険者ギルドとは、非国営の人材斡旋事業だ。

 各国に設置されており、現地の人間を冒険者に仕立てて仕事を提供するのだ。

 ギルドは依頼主から仲介料を貰うことで生計を立てている。

 他にも飲食業や多種多様な物品の売買も手を出しており、一言で説明するのが難しい組織である。


 依頼を受けて人材を派遣するという点では傭兵に近いものの、実態は少し違う。

 冒険者は、戦闘以外の依頼も請け負っている。

 人々の生活に密着している部分も多く、街によっては傭兵よりなくてはならない存在となっていた。


 移動中、俺はサリアに質問をする。


「ところでなぜ冒険者ギルドで登録するんだ? 今後のことを考えれば、別に必要ないと思うが……」


「英雄って冒険者とか傭兵をやっているものでしょ。そこから出世して有名になるのがいいと思うの」


 サリアは得意げに語る。

 確かに彼女の言う通りだった。

 冒険譚とはそのような展開が多い。


 各国にいる現役の英雄も、普段は冒険者であることも少なくない。

 有事の際は華々しく活躍しながらも、普段は地道な活動で地域に貢献しているのだ。


 冒険者ギルドに所属すれば、様々な依頼が舞い込んでくる。

 収入的な面でも安定する上に活躍の場を探すのが楽だ。

 冒険者登録は必須ではないが、役には立ちそうだった。


「サリア……さん、は冒険者になったことがあるのか?」


「呼び捨てでいいわ。私も冒険者になるのは初めてね。討伐対象に認定されたことは何度もあるけど」


「討伐対象……」


「昔はたくさん悪さをしたから、命を狙われていたのよ。若気の至りってやつかしら」


 サリアは懐かしそうに言う。

 まるで現在は違うかのような口ぶりだ。

 少なくとも貧民街では、サリアは高額の賞金首として有名であった。

 あちこちの悪党が彼女を殺したがっている。

 敵同士でも結託して金を出し合えるほどだ。

 よほど恨みを買っているのだろうが、その強さ故に誰も手出しできずにいた。


「ルイス君ならすぐに有名になるでしょうね。この街で一番の冒険者になるのも夢じゃないわ」


「それは難しいと思うが……」


 サリアがいる以上、どれだけ強くなっても二番目ではないか。

 こうして街を歩いている最中も、彼女は周囲から恐れられていた。

 一般の人々もサリアのことは知っているらしい。

 それほどの魔女なのだ。


(いや、彼女すら凌駕しなければならないのか)


 いつまでも頼り切りでは駄目だ。

 こうして仲良くできているので忘れがちだが、サリアは危険人物である。

 いずれどこかで敵対することになるかもしれない。

 協力できるうちに強くなって、打ち勝てるだけの能力を得るべきだろう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >いずれどこかで敵対することになるかもしれない。 ……ですよねー。 今の所、願わくばルイスとサリアの友好関係が長続きして欲しいと思ってはいますが。 「敵対」まで行かず「対立」する…
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