第13話 欠陥奴隷は気圧される
俺は熱い湯で身体をほぐして浴場を出る。
畳まれた衣服を着て扉を開けると、先ほどとは違う場所だった。
そこは暖炉のある居間で、ソファにサリアが座っている。
彼女は何かを飲みながら寛いでいた。
俺を見たサリアは、対面のソファに座るように招いてくる。
「おかえりなさい。男前になったわねぇ」
「…………」
俺は無言でそれに従い、柔らかなソファに身を沈めた。
身を乗り出したサリアが俺の前髪をつまみ、軽く引っ張ってくる。
「お世辞じゃないのよ? 髪も切って整えたら、もっと格好良くなるはずよ」
「……そうかい」
俺がそっけない態度でも、サリアの機嫌は変わらない。
常に微笑しており、よほど気分がいいのだと分かる。
サリアは前髪から手を離して座り直した。
彼女が指を鳴らすと、頭上から何かが落下して手に収まる。
それは球体の青い水晶であった。
やや透明で、暖炉の光を受けて輝いている。
「待っている間にこんなものを用意してみたわ。よかったら触ってみて」
サリアが水晶を手渡してきたので、俺は恐る恐る受け取る。
(何だこれ?)
俺は水晶をよく観察する。
結構綺麗だが、ただの宝石ではない気がした。
ただ、専門知識がないので分からない。
「スライムの核よ。死体からスキルを取れるんでしょ? お好きにどうぞ」
「…………」
俺は水晶を回してみる。
触り心地はとても滑らかだった。
これが魔物の素材だとは思えなかった。
(従うしかないか)
どうやらサリアは、俺の【死体漁り+】の効果を見てみたいらしい。
だからスライムの核を提供してきたのだ。
逆らえる空気ではないので、素直に善意を受けるのが正解だろう。
>スキル【再生】を取得
状況的に反応しにくいが、明らかに当たりだろう。
怪我を負っても自動的に治るスキルなのだ。
そのたびに魔力を消耗するものの、魔力に乏しい俺には連発できない。
まあ、万が一の時に頼れるスキルとなってくれるだろう。
サリアは俺を注視してステータスを確かめた。
彼女は嬉しそうに頷いて手を打つ。
「うんうん、無事にスキルが貰えたみたいね。良かったわぁ」
「それには感謝するが、一体何が目的だ?」
「怖い顔をしないで。私達は敵同士じゃないでしょう?」
味方同士でもないが、それを言うのは不味い。
強がらないのが身のためだろう。
何が機嫌を損ねるか分かったものではない。
足を組み直したサリアは、妖艶な眼差しで俺に提案する。
「さっそくだけどルイス君。私の助手にならない?」