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カルテNo.9 今日、ケ○タにしない?

「んー!やっと暇になったなぁ。」



 ラストさんに頼んで作ってもらった大衆浴場は大成功だ。

 衛生環境も向上して診療所に来る患者さんが減った。


 大衆浴場の管理もどうしたものかと思っていたがゴブリン達が担当してくれた。元々彼らは手先が器用な一族だから何を任せてもすぐに上達するし、風呂に入るようになってから綺麗好きになったから安心だ。

 看護師としてウチでも受け入れようと思うぐらいだ。



「ユタカ先生、暇すぎるのもどうなんですか?」

「…研究時間…出来るから…いいけど。」



 真面目なエリザさんからすると暇は罪なんだろう。

 そういう彼女も今コーヒーを飲みながら寛いでいるが。

 まぁ医者が遮二無二なって働けばそりゃより多くの人が助けられるだろうが医者だって人間だ。ほどほどに休息が必要だ。



「医者が暇な世界が一番いいんだよ、その分病人が居ないってことだからさ。」

「むぅ、一理ありますね。」

「だからこんな日は昼からフライドチキンとビールとかで一杯やるのが最高なんだけどなー。」

「やっぱり先生休みたいだけじゃないですか!…おや?」



 突然何かに気付いたエリザさんが窓の外を注視している。何かあったのだろうか?



「…先生、お望みのものが来るかもしれませんよ。」

「え、本当?」


 ケ○タって異世界にまで進出してるのか?

 なんてアホな事を思う前に俺も異変に気付いた。


 遠くから響く地響き、巻き起こる砂埃。



「な、何だ?!」



 窓に向かって目を凝らすとその正体が見えた。



「あれは…魔獣の群れか?!なんでこんな所に?!」



 避難とか回避とか考える前に魔獣の群れは目と鼻の先にまで迫っていた。

 もうダメだと腹を括った瞬間、土石流の如く押し寄せた魔獣の群れが診療所の前でピタリと止まった。突然の事態に呆然としていると、もうもうと立ち昇る砂煙の向こう側から声が聞こえてきた。



「突然の訪問失礼する。」

『するぜー!』



 渋くダンディズムが香る重厚な声と軽薄そうな耳を突くような声。

 両極端な声を響かせながら砂煙から現れたのは―――



 サングラスを付けた…ニワトリだった。




 ◇




「それで…本日はどのようなご用件で?」



 診察室の椅子に腰掛けた来客をまじまじと見据える。

 頭には真っ赤なトサカ。

 フワフワの真っ白な体に黄色いクチバシ…。



 ――うん、やっぱり(チキン)だな。



『お前今俺のこと鶏だなって思っただろ!』

「すいません、初めてお姿を拝見したので。」



 そうまくし立てるのは尾っぽから生えた蛇の頭。

 こちらも漏れなくサングラスをかけている。

 まるでチンピラのようだが、れっきとした魔物だ。



 ――魔獣コカトリス



 その息は触れたもの全てを溶かす猛毒

 その視線は全てを石に変える魔眼


 …と言われているが。

 外見は凄いモコモコで愛くるしい。



「六魔将 コカトリスのコーと申す。」



 本体と思しき鶏の方は言葉遣いが丁寧だ。

 色々とギャップが凄いが名前といいサングラスといい…イージートゥダ○スな感じが凄い。



「ご丁寧にどうも、医者の坂本ユタカです。改めて伺いますが本日はどういったご用件で?」

『おう!コイツらを診てもらいてーんだ!』

「コイツらって…コレですか?」



 コーさんの後ろには運び込まれた3つの石像が並んでいる。

 弓、大剣、槍を携えた男達の石像だ。

 何やら鬼気迫る表情だが色々と体制がおかしい。

 それに妙に股間がご立派な石像だ、趣味が悪い。



「そ奴らは人間軍から来た斥候だ。」

「はぁ?」

『風呂を覗いてたから石化させてやったぜ!』

「あ、なるほどそういうことでしたか。」

「…? 覗き?その時コーさんはどちらに?何やら体から漂う甘い匂い…まさか?」

『ち、違う!そうじゃねぇ!』



 何かを察したエリザさんが詰め寄る。

 コーさんが顔をそむけたところを見ると何やらやましいことがあるのだろう。風呂が出来た以上やるやつが出てくると思ったが、まさか六魔将がねぇ。



「で、では。確かに頼んだ。」

「はい解りました。」



 石化が治り次第捕虜として扱うことを確認し引き受けた。

 コーさんは痛い所を突かれたのかさっさと退散したいようだ。慌ただしく椅子から降りると、たどたどしい足取りで部屋から出ていく。



「むぉっ…!」



 焦ったせいか入り口の段差で蹴躓いてしまったようだ。

 白い羽毛の塊がコロコロと転がるのは見ていて癒しになる…じゃなかった。



「ちょっ!大丈夫ですか?」

「ッ!…かたじけない。」

「…?はい。」



 思わず抱き起すとコーさんは身を震わせ申し訳なさそうにしているが…何だろう?

 抱き起した時に何とも言えない違和感を感じた。

 何処かで感じたことがある違和感だが…何だろう。



「では、また。」

『じゃ、じゃあな!』

「えぇ、お大事に…。」



 その違和感に答えが出る前にコーさんは魔獣に乗って去ってしまった。


(あの感覚…まさかなぁ。)


 俺はモヤモヤとした感覚を感じながらコーさんを見送った。




 ◇




週に2日設けている休診日

俺は診療所の裏にあるキノさんの庵を訪れていた。

なんでも頼んでいた薬ができたようだ。



「キノさんどう?」

「これで…治る…はず。」

「有難う、助かる。」

「のーぷろ…いつでも…OK。」



 俺の手に握られた金色の液体は石化治しの霊薬。

 これはキノさんが調合したオリジナルで金針華という薬草の蜜に魔術処理を施したものらしい。


 石化した部位に垂らせば時間を追って生身に戻るらしいが、今回は相当至近距離から石化の魔眼をかけてしまったので、念のため俺に診てほしいという事だそうだ。


 しかしこの石化という物は、病気というより【呪い】という表現が正しいのだろうか。

 この原理について研究してみたいものだが、顕微鏡も無いから全く解らん。元の世界に戻ったら見れないだろうし勿体ないなぁ。


 若干テンションが低い俺を気遣ってかキノさんが朗報を知らせてくれた。



「あと…別で依頼されてた…アレ…。」

「ッ!まさかっ!?」

「もう…ちょっとで…出来そう。」

「うぉぉ!マジかありがとうキノさーん!」



 キノさんに個人的にとあるものの開発をお願いしているのだがそれがもうすぐ実現しそうだという。キノさんがペニシリンを作ったのをみた時にもしやと思ったのだが頼んでみるもんだ。



「バイブス…上がる…?」

「上がる上がる、めっちゃ上がる!いやー楽しみだなぁ。」

「そう…良かった…。」



 そう言うとキノさんは傘を目深に被って微笑んだ。


 しかしアレが出来るとなると俄然やる気が出てきた。

 後回しにしようとしていたあの違和感の答え合わせをするとしよう。


なぜこんなキャラを作ってしまったのか自分でもわからない――

などと供述しており云々かんぬん。


悪ノリが過ぎました。

「」の台詞は鶏頭が

『』の台詞は蛇頭が喋ってます。


DJニワトリがいたりEX○Tに毒された菌と無口少女がいるこの異世界大丈夫かな?(他人事)

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