母と僕と
昼前には僕は実家に帰っていた。
母には先に帰ることを伝えていた。
久々の母とふたりの昼食。
料理を教わったのも母からだった。
食後に食器を片付ける。
ゆっくりとお茶を飲んでいる母に意を決してカミングアウトする事にした。
「母さん、話があるんだけど…。」
母が顔を上げる。
「どうしたの?かしこまって。」
深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
「性同一性障害って知ってる?」
図らずもリサさんと同じような切り出し方をしていた。
母はその言葉で察したようだ。元男子やニューハーフの芸能人が出てきている。
言葉の意味を知っている人は知っているようだ。
「晶もそうなんやね。なんとなく分かったような気がするわ。」
「うん、ごめん。男として男らしく生きようと頑張ったけど無理だった…。」
きちんと聞いてもらえてる事と、今まで我慢してきた感情が溢れる。
涙が止まらなくなった。
苦しかった。
「もう我慢しなくてええんよ。母さんには晶が頑張ったのしってるから…ね。」
母も静かに涙を流している。
「晶、ちゃんと産んであげられなくてごめんね。」
母の思いがけない言葉。
僕のせいで母にそんな言葉を言わせてしまった。
「違うよ!母さんは悪くないよ!誰も悪くないんだよ。どうしようもなかったんだよ…。」
焼けるような昼下がり、やっと少し解放された気がした。




