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男子辞めます。  作者: 安田 桜
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カミングアウト

最近、仕事や旦那の看病など更新が遅れました。

まだ稚拙な文章しか書けないため、そのうち加筆修正を行おうと思います。

その気が起きればですが…


性同一性障害の診断は『自分史』というものから始まる。

どのような子供だったのか、いつ、どういう時に自分の性に違和感わ持ったのか?


家族にはカミングアウトしたのか?

家族はどう思っているのか?


などなど。


「『私』の場合は気づいた時には、という感じだったのだが、この歳まで気づかないように、気づかれないように周りに合わせてました。」


僕は過去の自分の過ごしてきた時間と向き合い今の僕の気持ちを淡々と答える。

リサさんのあの一言がきっかけだったのかも知れなし、涼子と別れたことかもしれない。


ただ、涼子と別れたことで僕をつなぎ止める最後の何かがなくなったのは確かだ。


先生は僕の人生が記録されていくノートパソコンから顔を上げる。


目が合う。


「ところで、家族や御両親、職場にはカミングアウト出来ましたか?」


実はまだできていない。


「職場は機を見て辞めるので、カミングアウトせずに行きます。ただの男として働いてれば問題ないので…。」


いずれは辞めるんだ。

黙っていた方が大きな混乱も避けられる。


「家族の方は…。」


言葉が詰まる。

母は分からないが、兄や父に否定されるのは火を見るより明らかだ。


「…。お盆に帰った時にカミングアウトします。」


震えそうな声を隠し、平然と答える。

答えたつもりだったのかもしれないけれど。


「こちらでもサポートは出来るので、不安な事があったら聞いてください。」


「わかりました。ありがとうございます。」


これで今日の診察は終わりだ。

正直、過去の事をほじくられて良い気はしない。

上着を着て、帰る準備をしていると、


「三崎さん、来月は診察ではなく心理テストと、血液検査、染色体検査を行います。血液検査と染色体検査保険適用外になるので診察料を多めに用意して来てください。」


「わかりました。ありがとうございました。」


ついに来月が…。


染色体検査なんてやらなくても結果はわかっているようなものだ。


元からXYではなくXXだったらどんなに良かったことか…。


そうなれば元々来てないのだけれど。


病院を出てのんびりと駅に歩き出した。



それから一月後。

特に面白味もなく心理テストと染色体検査を終えた。

ただ長いだけだったが、思うように答えて行った。


ホルモン注射をやっていたためか血液検査もされた。


来月の診察の時に結果が聞けるらしい。


そんなことよりもどうカミングアウトするかだが、まずは母に話してみようと思う。


その為にお盆直前に有給を取ったのはこのためだ。

昼間なら父も兄もいない。

そのうちに母に話し、状況次第ではそのままトンボ帰りだ。


「はぁ…、帰りたくないな…。」


出来るのであればこのまま誰も僕を知らない場所へ行ってしまいたいくらいだ。


一応は数日分の衣類を詰めたキャリーケースを引き摺り家を出る。

新幹線に乗るのが嫌だったのは初めてではないか?


重い足取りで駅へ向かった。


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