ピンチ
それから月日は流れ社会人3年目に入った。
そろそろ世間はゴールデンウィーク前。
去年は涼子と温泉旅行に行ったなぁ…。
なんて思いに耽っていたが、ある事を思い出した。
そう、健康診断だ。
注射に変えてからというもの、変化が著しく現れるようになってきていた。
スポーツブラはしているが、そろそろ胸を抑えるか何とかして隠さないと不味いくらいだ。
そんな中の健康診断だ。
上半身を脱ぐことになる。
胸がバレてしまう。
最悪周りに知られてしまう可能性が高い。
どう乗り切るか考えなければ…。
♢
そして良い案が浮かばないまま当日が来てしまった。
ただ、運がいい?事に会社の駐車場まで診断バスが来ることになっていた。
せめて知られる人数を減らそうと終わり際に行く事にした。
それでも確実に知られるだろう。
なるようになる。
もはや諦めの境地でバスへ向かった。
レントゲンの前に上を脱ぐことになる。
覚悟を決め脱ぐ。
「あの、女性の方は午後からですけど…。」
「え?あの…えっと…」
看護師の言葉にしどろもどろしてると、
「あ、すみません、なんでもないです。」
性別欄でも確認したんだろうか?
名前的にもどちらも有り得るし、胸がこんなならそりゃ勘違いもされるのは分かっていたが、予想に反して特に何も無く終えることが出来た。
しかし、この事が知られるかもしれない。
そう思うと不安が僕の体を押しつぶしてくるようだった。




