98.
「やっているな」
宇宙では、その様子を無線傍受をしながら聞いていた。
「艦長、何をしていらっしゃるのですか」
日本皇国宇宙軍航宙空母畿内艦長である狩留鹿毛宇宙将補が、ニヤニヤしているのを、部下が見つけた。
「ああ、無線を聞いていてな」
「無線ですか」
部下は、小康状態になっている欧州側との戦闘の合間に、あちこちの点検を済ましていたようで、その報告書を狩留艦長へ届けに来たところだった。
腕の中には、薄い一枚のシートがあるだけであったが、その中に、全ての部署の情報が記録されている。
それを狩留艦長が見て、現状を確認するためのものでもある。
「少なくとも、爆弾によるテロは回避されたようだな」
「大阪で起こった、あのテロですか」
「さすが。噂が伝わるのは早いな」
「ええ、艦内の大半が、既に知っているでしょう。ネットでもホットな話題ですから」
「インターネットか。受信だけはできるからな」
そう言って、皇国独自のネットワーク網へと接続を行う。
ウブスナガミが統括しているこのネットワーク網は、高度に暗号化された特別回線で接続を行っているため、若干のラグが発生してしまうのが難点である。
だが数マイクロ秒程度のラグは、無視してもかまわないほどの短時間だ。
狩留艦長がそう言って、ネットワークに接続をすると、すぐに戦況が表示された。