96.
「周囲100mの全員退避完了、周囲1km以内の安全圏退避確認完了」
耳元に付けている無線から、誰かの報告する声が聞こえる。
「了解した。では、これより爆発物の解体を行う」
大阪駅、5番6番ホームの中央エレベーター脇で、全身を爆発防護服を包んだ男性が2人、紙袋に入った爆発物へとゆっくりと向かっていく。
「爆発物の種類は、C-4、コードが5本出ていて、時限装置、携帯、水準器の各種起爆装置。それらとC-4本体をつないでいる基盤に全てつながってる。ここまでは赤外線で探査が完了してる」
手に持っている、調査内容が書かれた報告書を見ながら、5mほどのところまで普通に歩いて近寄った。
「では、これより爆発物の解体を実施する。爆発物の種類はC-4、コードは時限装置と基盤の赤色、携帯電話と基盤の黄色、水準器と基盤の水色、C-4と基盤の黒色および白色がある。まず、どれからきるべきだろうか……」
一つ間違えたら、間違いなく爆発するだろう。
水準器があるということは、傾けたら爆発するということ。
時限装置があるということは、犯人が設定した時間になれば爆発するということ。
さらに携帯がつながっているということは、犯人が好きなタイミングで爆発するということになる。
つまり、水準器を傾けないようにしながら、時限装置が作動するよりも速く、形態の動作を止めつつ解体する必要がある。
それが果たしてできるのか、いやしなければならないと、彼は防護服の中で固く誓った。