95.
「やあ」
検問で、通行規制をしている軍服を着た人に、水野は何気なく声をかける。
「申し訳ないですが、こちらは通ることができませんので」
「いや、君の上司に用があるんだ。君は、どこの所属だい」
腕の腕章や肩章を見れば、すぐに分かるのだが、水野はそれでも確認のために所属を聞いた。
「第4軍第12憲兵大隊第4憲兵隊です。失礼ながら、あなたは」
「水野と言えば、きっとわかるさ。上司にちゃんと伝えてくれよ。皇国通信社の水野だからな」
「はぁ」
気のない返事をして、別の警官が入れ替わりに見張りに立つ。
数分後、憲兵中佐がやってきた。
「水野さんですか、お久しぶりです」
「確か、君は寒田くん、だったかな」
「そうです。前回お会いした時は、憲兵少尉として、分遣班を率いていました」
「そうだったかな。まあ、なにはともあれ、元気そうで良かった。それで、一つ頼みがあるんだが…」
「部下を2人つけさせてもらいます。それに、ここでボディチェックと、現場付近は、完全立ち入り禁止。こちらの指示には従ってもらいます。これは特別措置ですからね」
「それでいい」
皆言わなくても、水野が何を言いたいのかはすぐに伝わったようだ。
すぐに近くに警官と憲兵一人ずつを呼び、二人の記者に付き添わせて中へと入らせた。