94.
大阪へは、4時間かかって到着した。
正確に言えば、大阪ではなくて、鶴橋駅だ。
「環状線は、こちらは外回りだけ動いてますね」
動いてはいたものの、大阪付近で折り返せる場所で折り返し運転となっていた。
「止まっていないだけましさ。だが、環状線じゃなくて地下鉄に乗るぞ」
「わかりました、地下鉄でそばまで行くんですね」
「まあな。鶴橋へは千日前線がある。そこから日本橋で堺筋線に乗り換えて、天六へ向かう。さらに乗っていけば阪急京都線の淡路駅だ。そこでさらに乗り換えて十三から梅田へと。阪急梅田駅が大阪駅だから、すぐだな」
天六とは、天神橋筋六丁目という駅の略称だ。
二人は十三までは、人ごみにまぎれながらもうまくいくことができた。
だが、それ以降は、止められていた。
「どういうことだ」
「爆弾が見つかったって言ってますね」
水野がすぐにそばにいた側島に返事を求めた。
「なら、梅田駅も封鎖だな…よし、ここで降りるぞ」
水野はすぐに決断を下した。
駅の改札を抜け、すぐにタクシーを拾ってから、大阪の中心へ可能な限り行くように運転手へ言った。
タクシーの車内で、スマートフォンや運転手からの話などを聞き、また、交通情報から封鎖されているところを仕入れる。
すぐに、検問が敷かれているところへとやってくると、2千円を適当に運転手に押し付けて、タクシーから降りた。
「水野さん、どうするんですか。相手は警官ですよ。それに、皇国軍も何人かいるみたいです」
「なら、やり方はあるさ。ここは、軍だったら第12師団か第13旅団が来てるだろうからな」
管轄区域から見て、それは正しいだろう。
だが、側島は水野がなぜそこまで自信があるのかが、分からなかった。