89.
「いまだ、総員撃破せよ」
磯田中佐の号令によって、砲門が全て中国側に向けられた。
磯田中佐への返答は、それぞれの徹甲弾で行われた。
スピードを増して、戦車を砲弾が貫く。
とたんに、内部で炸薬が爆発し、戦車は内側から破裂した。
その戦果は、上空3万6000キロメートルからも、見られていた。
日本皇国宇宙軍が保有している軍事偵察静止衛星が、その戦闘の様子を、克明に記録し続けていた。
これらの記録については、同時に、東京へと転送された。
「我々が、今のところ優位に立っています」
「そのようだな」
作戦会議室で、宇宙軍省の首脳陣が作戦を練っている。
「満露国境線戦については、以後も、同程度の戦闘が発生するものとみられます。露欧戦線においては、甚大なる被害が出た結果、ロシア側が、消極的になりつつありますね」
作戦参謀が大臣へ具申する。
「このままですと、ロシアが我々側から離反するか、欧州と和平条約を結び、中立国化することが予想されます。そうならないためにも、我々も、最終兵器の威力を見せ付けるべきでしょう」
「非核大戦とは、このようなものか……」
大臣が、だれにも聞こえないように、ぼやいた。
「衛星爆弾については、内閣の承認待ちだ。もしも、承認ができたら、小規模のものを落とす」
ガヤと、会議室が一瞬騒がしくなる。
「そのための準備を整えよ。いつでも、欧州地域に、指定の場所に衛星を落とすことができるように」
「了解しました」
各軍人は、会議室を出るときに大臣へ敬礼をした。
大臣一人が残った会議室で、大臣は、資料に目を通しながら、ため息を一つこぼす。
「できれば、使わないでもらいたいものだ。だが、使わざるを得ないのだろうか……」