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88.
近くにあった戦車は、その衝撃波にやられ、側壁がわずかにくぼんだ。
その程度で済んで、よかったというべきだろう。
直撃を受けた戦車を中心にして、1メートルほどのすり鉢状のくぼみが産まれていた。
「どれだけの弾薬を積んでいたんだ」
磯田中佐が、戦車の中から、その様子を見ながらつぶやいていた。
「分かりかねます」
同乗者の高田大尉が答える。
「とにかく計画通りに進もう。左右の班にも通達を」
「了解」
短く答えてから、さらに中国側との距離を詰めていく。
「榴弾発射せよ」
磯田中佐が指示すると、何も言わずにAIが榴弾砲を中国側へ向けて発射する。
榴弾砲は中に細かな弾が入った砲弾で、中国側の戦術とは違い、戦車の上空で爆発し、重要な電磁の目を奪うというものである。
中国軍戦車部隊の上空50メートルほどで、それは爆発した。
煙が空気にたなびいている下では、数百もの子弾が散らばっていた。
その一つ一つがわずかながらも電磁波を発する構造で、それによって敵が使用している電気を使用している全ての物が、1分足らずではあるが使用不能となる。
その間に、決着をつけるつもりなのだろう。