87.
粘着弾が、日本皇国の戦車の足元に着弾した。
とたんに、粘着質な物質が、キャタピラの動きを止める。
「個別撃破を行え。後ろの車両は、後で構わん。まずは先頭の車両を足止めし、スクラップへと変えるのだ」
李中佐が、中国側の全車両へと、通達を出す。
すぐさま複数の徹甲弾がすでに動きをやめている洗車めがけて発射される。
一つ、二つと心の中で数えながら、弾着する時を待つ。
その瞬間が訪れるまで、さほど時は必要ではなかった。
徹甲弾は放物線を描きながら、見事に戦車の足元をえぐり、砲塔を打ちこわし、中の人員を殺傷した。
先頭車両が撃破されたからと言って、それを回避しながら日本皇国軍は進撃を続ける。
「次の車両へ、粘着弾を。各列、1両ずつ、間違いなく撃破せよ」
その応答を聞くことなく、衝撃が李中佐の搭乗機を襲う。
それは、弾を発射した衝撃だった。
目標の後方へと着弾した徹甲弾は、そのまま突き刺さった形で、熱を放出しながらも形を保っていた。
戦車はそれを避けつつ、間違いがないように照準を合わせる。
そして、日本皇国側が反撃となる弾を放った。
その弾は、さきほどと同じく、計算されたかのように素晴らしい動きをしながら、見事に敵の砲身へと当たる。
刹那、砲身はまずは赤く熱を帯び、続いて内部から膨張、爆発し、その衝撃で数メートルほど後ろへと下がったうえで、さらなる大爆発を起こした。
火薬に引火したようだ。
その膨大なエネルギーによって、衝撃波が発生した。
衝撃波は物理の法則に従って、遠くへ行くにつれて急激に減衰したが、近くにいた戦車に与えた影響は大きかった。