75.
アーノルド元帥は、ドイツの科学者夫婦のもとに生まれた。
昔から、研究畑であったが、23歳のときの研究が認められ、当時のNATO軍事委員会直轄である研究所へ就職。
以後は、一研究者として兵器の研究を続けていた。
23歳の時に行った研究は、「物理的兵器における、被害をいかに増大させるか」という題名をつけた論文だ。
元帥の論文において物理的兵器というのは、一般的な戦車、火器類、ミサイル等のことを指し、非物理的兵器とは、電磁パルス、音声などのことを言った。
これらの兵器を、いかに効果的に使用するかという研究というわけだ。
このために、より効果的に敵を殲滅することができるかという研究を行っていた。
その研究を生かし、行った実験の数々は、軍事上の最高機密文書に指定されており、今でも中を確認することは不可能である。
アーノルド元帥の最高傑作だと評されるものが、今回、大統領から命じられたアレの正体となる。
「元帥閣下、それは本当なのですか」
部下に元帥が命じている。
「ああ、本当だ。速やかに準備に取り掛かれ」
「はっ」
敬礼し、部屋を駆け足で出ていく部下に、元帥は独り言を投げかけた。
「…大統領はご存じなのだろうか。これは、悪魔の兵器となるということに…」
原理は単純なものだ。
通常の爆弾だ。
だが、設置するところは地下となっている。
雰囲気的には、巨大な地雷といったところか。
鉱山の発破用の爆薬よりも多く入れたものを、対象物のそばに埋没させる。
この埋没にも、一定の理論があるが、ここでは割愛しよう。
埋没を確認したのちに、上空から起爆用となる爆薬を投下し、一定以上の気圧を生み出させる。
その結果、埋没した爆弾が爆発し、陥没を引き起こす。
同時に上方向への指向性の爆薬であれば、上部建物は一瞬にして崩れ落ちる。
これが、アーノルド元帥が考えた方法だ。
だが、さらに発展させたものとして、核を使うという手もある。
地下核実験の要領で、爆発を引き起こさせると、岩盤ごと破壊することができるのだ。
これも、元帥が考えたものだ。
だが、今回使用するのは、爆弾自体は、別の研究者が作ったものである。
レーザーパレスによって上空から照射することによって、範囲にあるすべての起動を同時に引き起こすことができるという仕組みだ。
これによって、広範囲で元帥の実証が行えるということとなる。
大統領は、これを行えと指示をしたのだ。