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皇国戦記  作者: 尚文産商堂


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75/117

74.

大統領演説から1時間後、北米条約連合は欧州連盟に対して、宣戦布告を行った。

議会は全会一致で、大統領が求めた宣戦布告の承認を行った。


欧州連盟はそれを受けて、北部大西洋一帯における戦力強化を宣言。

東を日露合同軍と、西を北米条約連合との戦争が始まった。

欧州連盟大統領は、北米連合大統領の宣戦布告と同時に、全域の健康な18歳から25歳までの男女を徴兵し始めた。

さらに泥沼の様相となってきた今次の大戦では、北米条約連合が日本皇国側に立って宣戦を行ったため、世界規模での勢力均衡が破られた。


北西部大西洋の防衛の要として、北米条約連合が選んだ基地は、ノーフォーク軍港だ。

第2艦隊の母港として、また、アメリカ東海岸の防衛の中心として、世界最大級の軍港として整備された歴史を持つ。

また、欧州連盟に母港を置いていた第6艦隊は、宣戦布告をもって解体。

その勢力は、第2艦隊と、南米に本拠地がある第4艦隊へと、それぞれ分割された。

同様に、欧州連盟と提携をしていた全北米条約連合籍の企業、軍需、民間団体等は、欧州から一斉に引き上げた。


なお、欧州連盟に宣戦布告したことにより、すでに締結されている条約に従って、中国、インドその他欧州連盟の連盟国に対して、自動的に宣戦したのと同じ効力を生ずることになった。


欧州連盟大統領は、その閣議の場で、そのことを討議することを決め、連盟各国にそのことを通達。

翌日の午前9時より、開かれた。

「では、会議を始めます」

「北米条約連合が我々に対して宣戦布告を行ってきた。これは、月面に対する攻撃が原因だといっている。そのことについて、中国は、一切関与をしていない」

開口一番、中国外交部長が言い切った。

「それはわかっています。これらは、欧州の問題。我々でけりをつけます」

「そういってくれると、とてもありがたいですね。問題は、我々に対して、北米が攻撃を仕掛けてきたときです」

「それについては、我々はどうしようもないですね」

「二正面作戦で、攻勢を強めるおつもりですか」

「ええ」

ここで、インド代表である駐欧州全権大使が初めて発言をした。

「インドについては、欧州と条約を結んでいる以上、欧州とともに行動をいたしましょう。もっとも、よりよい実を求めておりますが」

「…いいでしょう。この戦争が終わった暁には、北米条約連合の統治権を差し上げよう。中国さんはいかがいたしますか」

「我々は月面へ対する確固たる地位がほしいですな。まあ、無理に、とは言いませんが」

「ならば、北米連合下にあるすべての月面上の地位、権益、領土等を中国へ。地球本土にある北米連合の領土等はインドへ。今次大戦における一定の賠償金は我々がいただきます」

「では、そういうことで」

まず、中国が欧州連盟大統領の前にあるモニターから消えた。

「お忘れなき用に…」

「ええ」

続いて、インド大使の顔が消えた。

「大統領、どうしますか」

「奴らに残すものなどない。すべてを焼き払え。アレを準備せよ」

大統領の下命に対して、軍部としては最高位である欧州連合軍総司令部総司令官であるアーノルド・シュターレン陸軍元帥は反論した。

「しかし、アレは、いまだに実験が不十分でして…」

「構わぬ、実戦で実験を行え」

大統領の目つきに、敬礼してアーノルド元帥は答えた。

「了解いたしました、準備いたします」

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