72.
欧州連盟は、北米条約連合からのその話の真偽を確かめるため、月面領へ報告を求めた。
欧州連盟月面領としては、ルーナ公爵領という扱いをしており、選挙によって選ばれたルーナ公爵が総督として、欧州連盟大統領の名代をしていた。
ルーナ公爵は欧州連盟から指示を受けると速やかに、北米条約連合月面自治区に連絡をとった。
自治区は、条約連合の領土として、すでに認められており、現在では、1万数千人が住んでいる。
また条約連合大統領を選挙によって選ぶ権利も有している。
つまり、北米条約連合本土と同等の権限が認められているということだ。
「さて、どのようなご用でしょうか」
自治区長、いわゆる知事が、電話で連絡をしてきた公爵へ、穏やかな声で聞いた。
「そちらで、月震によって建物が崩れたと聞いたので。大丈夫でしょうか」
「住宅が複数倒壊し、道路も何カ所かで陥没が発生しています。運がいいことに、住民に負傷者はおりませんが」
「それはよかった」
「そういえば、今回の月震の震源地は、珍しいことに表面上だったそうです。たしかシルベスタークレーターだとか」
「らしいですね。こちらも揺れまして。改正メリカリ震度階では、震度3を観測しました」
人に怪我がないということで、ホッとした感じで話していた公爵だったが、震源地の話へ変わると、言葉を選んでいるように、ゆっくりとした話し方になった。
「さらに言えば、欧州連盟さんのミサイルが原因だとか。攻撃によって、我々に被害が出たということは、直接的に被害が出ているということ。袂を分かつ決断を、大統領が行ったのは、自国民を守るために、仕方がなく行ったことです。本土へお伝えください。本日、大統領は宣戦布告の文書に署名し、全世界にいる同胞に演説を行います」
それだけ伝えてから、自治区長が一方的に電話を切った。
公爵は、ツーッツーッとなっている受話器を、ため息混じりで、静かにおいた。