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第51章 東京戒厳司令部
皇紀2760年勅令第421号により、陸軍近衛師団、第8師団、第9師団、海軍第1艦隊、空軍第1航空隊を職務停止とし、第1師団を東京戒厳司令部として改組することが決定された。
これらの部隊は、関東一円を守護するための部隊であり、また、東京という日本皇国憲法に規定されている首都を守るためにある。
だが、それらを一つにまとめ上げるということは、首都の防衛能力を格段に高めることにつながった。
第1師団師団長改め東京戒厳司令部司令官となった甘貝広阿少将が、防衛司令部でそれぞれの職員の長と会合を開いていた。
「今回の戦争の陽動作戦とみられる占拠事件は、すでに収束に向かっている。だが、中国、インド、欧州との戦争は、これからが本番だ。東京という一地域で見たとき、どのように感じる」
甘貝少将は戒厳司令部参謀長に聞く。
「東京で戦闘が起こることはあまり考えられません。もちろん、工作員が起こす突発的な戦闘はあると考えられるので、備える必要があります」
「工作員というのは、ゲリラだと思っていたらいいのか」
「そう考えてもらっても結構です。国際条約において保護されない彼らは、正式には捕虜とせずに、処断することが可能です」
「なるほど……防空は」
防空は、空襲に備えるということが元々の意味であり、ここでは制空権を含めた空全般のことを指している。
「宇宙軍からの監視を逐次報告してもらっています。敵軍が不穏な動きをしたら、すぐさま教えてもらうことになっています。潜水艦については空軍及び海軍が常時監視しています」
「敵艦隊についても、宇宙軍が管轄しているのか」
「ええ、そうです。他に空軍も監視しています」
「分かった。スクランブルをかける際は」
「航空隊に直接下命します。小隊規模で緊急発進は可能です。いつでもいけますよ」
「よしわかった。首都防空はそれで大丈夫だな。工作員による暴動は」
「東京都庁、衆議員会館に対しての侵入は排除済み。その他、関東圏における暴動はすべて鎮圧済みです」
「なら、次の話をしよう。現在の主戦場は、朝鮮半島北部、満露国境線、露欧国境線か」
「皇国軍が直接的にかかわっているのは、前2つです」
参謀長がよどみなく答える。
「露欧国境線には、観戦武官がいただろ」
「ええ、駐在武官の一部を派遣しています。どうしましたか」
「いや…なんでもない」
司令官はそう言って、部屋から出た。