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51.

第47章 外患誘致罪


「なるほどな」

日本皇国の閣議の場で、首相は、角良から受けた連絡の文面を閣僚らに回していた。

「それで、どういう方針をとるおつもりで」

軍務総省大臣が聞く。

「ここまで来てしまったのなら、振り返ることはできないだろう」

首相はそう言って、手元にある書類を見た。

「この書類は、軍務総省の下のほうに無理を言ってコピーしてもらったものだ。それによれば、欧州は近いうちに航宙空母を相当機あげるつもりらしい。それに対しての対処も考えねばならない」

「敵が完全に上げてからでは遅いと思います。宇宙空間へ出て、こちらが有利な時点で攻撃を加えるべきです」

軍務総省大臣が、首相に伝える。

「費用は」

財務大臣がそれにかみつく。

「戦争中に費用云々を気にする必要はほとんど無いと思うがね」

内務省大臣があっさりとなだめる。

財務省大臣は、それに何も言わず、閣議室から出て行った。


廊下で携帯をとりだし、どこかへ電話をかけた。

「ああ、私です。ええ、じつはちょっとヤバいことになりまして…」

財務省大臣は、その相手に敬語を使っていた。

「…はい、分かりました。目をそむけるために必要なのは、父があなたに送ったあの座標へ攻撃を加えることと思います。はい、分かりました。では、待機します」

電話を切ると同時に、警察の制服を着た男たち10人と公安省大臣が、財務省大臣を取り囲んだ。

「何のご用でしょうか」

「財務省大臣、あなたを逮捕します。罪状は、外患誘致罪、および同罪未遂、内乱扇動罪、殺人未遂罪、以上の罪です。あなたには黙秘権があり、証言は法廷で不利な証拠となる恐れがあります……」

公安省大臣が、ミランダ警告を財務省大臣へ伝える。

「何の証拠があって、このようなことを?」

手錠をかけようとする警官を払い、公安省大臣へ聞く。

「先ほどの電話の主は、中国政府ですよね。電話の記録は既に押収させてもらっています。さらに、国内にいる在日朝鮮人らを、中国政府からの指示により内乱を引き起こすように手引きをした。すでに制圧はされていますが、その複数の人物が、あなたの名をあげてますよ。俺たちはそいつにだまされたといってね。それに、あなたの父親は、中国政府より勲章をもらっている上に、あなたももらっていますよね」

「しかし、それは国交がなくなった時点で、返上しました」

「それでも、密約については、無効となっていないのでは?」

公安省大臣はそう言って、背広の内ポケットからICプレーヤーを取り出すと、その場で録音されていた音声を流した。

それは、今の財務省大臣の父親が、閣議から出た時に話していた言葉だった。


“…さて、どうしました?”

“同志よ、日本は変わった。昔の日本国ではない。そのままが通ると思ったら、痛い目を見ることになりかねん”

“そうですか…それよりも、ウブスナガミがどこにあるか突き止めましたか?”

“ああ、どうやらうわさは正しいらしい。ウブスナガミは、宇宙空間に存在する。すこし前、日本皇国が月探査衛星と称して打ち上げたものがあるだろう?”

“ありましたね”

“この中に、その着地地点が書かれている。それを基にして割り出してくれ。うまくいけば、ウブスナガミを破壊することが出来る”

“同志よ。あなたの行いは、中国人民共和国政府が後々の世にまで伝えることになるだろう。日本皇国が滅ぼされたとき、あなたはその跡の地で、生涯君臨し、一切の行動の自由を赦された唯一の人物となることを保障しよう”

“ありがたき幸せ…閣下にも、お伝え願いますか?わたくしのような者を拾っていただき、いたく感謝していることを…”

“確実に伝えることを約束しましょう。それでは…”


ICレコーダーを止め、再びポケットにしまう。

「あなたの父親である、当時の法務大臣のような方が、なぜ、軍事機密であるウブスナガミの場所を知りたがるのか。部下から、彼が資料請求をしたと聞いたときに疑問に思ったことです。そして、怪しいと思った私が指示をし、盗聴器を仕掛け、この録音を手に入れました。その時に渡した座標は、すべてうその内容。当時は戦端は開かれていなかったので、問題にはなりませんでしたが、それから数十年がたち、実際に戦争になると同時にこの録音を取り出すと同時に、あなたの身辺等、一切を調査しました」

次に、写真を何枚か見せる。

「あなたの家の中に、迫撃砲や手榴弾や小銃など、複数の火器がありました。どう申し開きをするつもりですか」

財務省大臣は、なにも語ろうとしなかった。

その代わり、憲法をひいあいに出してきた。

「日本皇国憲法には、大臣の不逮捕特権が書いてあったはずだ。それを行使する」

「第78条第4項のことでした残念ながら、外患誘致罪と内乱罪について、その特権は無効とされるんですよ。ということで、しょっ引かせてもらいます」

そして、大臣はそのまま閣議室に戻ることなく、警察へと連れて行かれた。

最終的な罪状は、敵国に対する利敵行為、内乱を扇動した行為、つまり、外患誘致罪と内乱扇動罪とされた。

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