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第46章 最初の一発
斎河率いる戦車部隊が、中国駐留軍の基地の正門を通った瞬間、最初の戦車の下が白く光り、土煙りがあたり一面に立ち込めた。
「地雷だ!」
斎河が叫ぶと同時に、どこからか銃弾が戦車めがけて撃たれてくる。
しかし、電磁装甲は、その銃弾を瞬時に破壊する。
「司令部の上空方向から、撃ってくるようですね」
洗川が瞬時に撃ってくる方向を割り出した。
「まだ生き残ってたのか」
舌打ちをしてからそう言うと、ほとんど瓦礫と化している敵の元司令部の建物に一番近い戦車小隊である第2小隊へ連絡をする。
「第2小隊長、司令部の建物に砲撃してくれ。榴弾、鉄鋼弾などについては任せた」
「了解です。弾種問わずに、司令部の建物に砲撃します」
第2小隊の戦車部隊は、司令部の建物がある、進行方向から左手に向かってゆっくりと進みだした。
「全発ダメか…」
ライフル銃を抱えたまま、宋は司令部の廃墟の上でつぶやいた。
「仕方ない、これは使いたくなかったんだが…」
ため息をついて、ポケットから特別に作った、たった一発だけの弾をとりだした。
それを、ライフルに装てんし、司令部へ向かってきている戦車の先頭に狙いをつける。
「頼むぜ、相棒…」
スコープから戦車の主砲の根元付近を狙い、何のためらいもなく、引き金を引いた。
弾は、空気なんて無いかのように、狙い通りの位置に吸い込まれていった。
ガンッと重たい金属同士がぶつかるような音が聞こえたかと思うと、一瞬で戦車は中から爆発を引き起こした。
「なんだ!」
「分かりません、電磁装甲が破られた模様」
「第2小隊、誰でもいいから答えるんだ!」
斎河が叫ぶ。
「こちら、第2小隊小隊長です。敵は、どこからか狙撃を行い、先頭戦車の主砲付近に着弾、瞬時に内部より爆発を引き起こし、戦車は大破、現在も炎上をしています」
「分かった。そのままいけるか」
「もちろんです」
「分かった。では、司令部の完全な破壊の指令は続行するものとする」
そう言って、斎河は無線機の電源を切ると、すぐに足元にいる洗川に言った。
「洗川、角良司令長官にもこのことを知らせておいてくれるか」
「了解です」
即座に、手元にある暗号無線機で、打電した。
角良の元へ、その情報が送られてくるのは、その数秒後だった。
「…そうか」
角良はそれだけつぶやくと、幕僚たちに、そのことを単純に説明した。
「わが軍が攻撃を受け、戦車1台が爆発、炎上したそうだ」
「しかし、我々の戦車には、電磁装甲が積まれていたのでは…」
幕僚の一人が言う。
「それは、実験的なものにすぎない。実戦投入は初めてだ。かといって、実験段階のものを無理に投入したというのも事実……」
角良はそれを言うと、伝令を呼んで、本省へ連絡をとるように言った。
「やはりか」
司令部の廃墟の上でスコープから炎上した光景を確認した宋は、本国へ連絡をとった。
それは、この敵の新型戦車に有効な攻撃方法と、弾の種類がわかったということだった。
その直後、宋がいた建物に第2小隊が榴弾を撃ち込み始めた。