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4.

第5章 戦争の下準備


日本皇国がアジア連邦(AF)と協定を結び、さまざまな資源や軍事関連との融通協定を結んだ時、ロシアが日本と接触を図ってきた。

日本の首都である東京市にある、大使館から極秘に出向していた。


「それで…何のご用でしょうか」

外務大臣スバロフスク・ミハイルが直接出会いに来ていた。

「星井出大臣、突然の無礼を先に詫びさせていただきます。率直にお話しさせていただきましょう。我が国は、現在中国国境付近で膨大な量の石油資源が発見されました」

「ええ、それは重々承知しております。現在も日本皇国としましては、採掘技術移転を予定していまして…」

「それが問題なのです」

ミハイルは語気を荒げていった。

「大臣、実はあの石油資源の6割ほどはわが領土にあります。しかし、残りの4割とは直接つながっているために、中国側がすべてを取りつくす可能性もあるのです。それを防ぐために、われわれと協定を結んでいただきたい」

「…さて、そのような協定を貴国と結び、日本皇国にはどのような利益があるのでしょうか」

「石油の発掘許可を差し上げます。さらに、優先発掘権も無償で贈与します」

「それで、われわれは何をすればいいので」

「基本的には、軍で石油の発掘付近を防御していただきたいのです」

「…すでに、AFと同様の協定を結んでいます。他におっしゃることがないのであるならば…」

星井出は、少し腰を浮かばせてミハイルを見ていた。

「いえ!少しお待ちください!」

急にミハイルが叫んだ。

「インドネシア付近にも確かに、石油は大量にありますが、そのすべての量を優に上回る量が、中国東北部にはあるのです」

星井出は、再びしっかりといすに座って言った。

「…ロシアとAF間で、同様の協定を結んでいただきたい。それに、北方領土の問題も解決をしなければならないと考えています」

「…領土問題は、私ひとりでどうしようもありませんが、ロシア・AF間の協定ならば、私の名誉をかけて保証しましょう」

「わかりました。では、協定に関してはいったん閣議にかけますが、すぐに戻ってきますので、そのままお待ちください」

そして星井出はいったん、部屋から出た。


すぐに、首相官邸へ向かった星井出は、そのまま、緊急閣議を招集させた。

「…ということです。いかがいたしますか」

「石油権益がそのまま手に入るのならば、それにこしたことはない。だが、中国を筆頭として、その他の国々と戦争をすることは、極力避けたい」

首相はそう言った。

「ならば、中立協定のような形で…」

「…いや、そのままで行こう。原案通り、可決すべきだ」

その一言で、協定が施行されることに決まった。


すぐにその情報を持って、星井出が戻ると、先ほどとほとんど変わらない格好で、ミハイルがいた。

「どうでしたか?」

ミハイルは、心配そうに聞いたが、あまり悲観はしていなかった。

「ええ、大丈夫です。あなた方が約束を守っていただく限り、この協定は有効です。あなたの本国にも、そう伝えていただいて結構です」

それだけ言うと、ミハイルは大喜びをして、星井出に抱きついてから、部屋を後にした。

ひとり残された星井出は、呆然と立ち尽くした。

そして、我に帰ってから言った。

「…まったく、ロシア人というのは、よくわからん…」

それから、星井出も部屋を出た。


翌々日の国会によって、ロシアとの協定は正式に締結され、同時にロシアとAF、AFと日本の協定も発効された。

同日、中国人民解放軍の部隊が、朝鮮王国側について戦争に参加することを宣言。

日朝という2国間の戦争から、少しずつ発展していっていた。


さらに翌日、ロシア、AFは日本皇国側に就くことを宣言。

すでに石油権益の取り合いになっていた中国東北部を、ロシアの戦車が一気に侵略した。

インドは、中国側ともともと仲が悪かったため、この時点では動かなかった。


一方、ヨーロッパ側では、革命の準備がすべて整った。

その日の前日に行われた国勢調査によれば、失業率は35パーセントを超えていて、現在の政権をどのような方法をもってしても倒さなければならないと思い始めていた。

「ジャンクス大臣。1週間がたちました」

「いよいよ、その準備が整ったな。すでに国民も、政権打倒を願っているが、現在の政権は議会解散も、総辞職するつもりもないらしい。我々が立ち上がる時が来たのだよ」

「…1週間前、私が思っていたのは…」

ジャンクスは立ち上がり、彼の右肩を比較的強く叩いた。

「人間だれしも間違いはある。問題なのは、それをどうやって処理するかだよ」

そして、ジャンクスは、部屋を出て、革命軍を直接指揮をするために準備を始めた。


その革命が始まったのは、ヨーロッパ連邦議会があるルクセンブルグだった。

議事堂へ侵入を果たした革命軍は、真っ先に議員を人質に取った。

「ここから、われわれの革命がはじまるのだ!みなは、われわれについてこれば必ずや、生活を良くすると保証しよう!」

そのようなことを言いながら、全世界に対して、革命政府の樹立を宣言。

もともとの政権は、あまりの出来事にどうすればいいかわからなかった。


その直後から、ヨーロッパ連邦全域のいたるところで、革命政府側につくという宣言が相次ぎ、政権は崩壊した。

「…私は、どこで間違えたのだろうか…」

執務室で一人たたずんでいる大統領がつぶやいた。

すぐ外では、閣僚が次々と逮捕されており、唯一の未逮捕者だった。

その時、扉が開かれて、銃を持った軍人があらわれた。

「大統領閣下。あなたに対して逮捕状が出されております。どうか、ご一緒に同行を願います」

「そうか…わかった」

こうして、ヨーロッパ連邦は、革命により新たな政権が発足した。

この政権が一番最初にしたことは、欧印中同盟を築き、日本と戦うことだった。


執務室に座ったジャンクス革命政府主席は、さまざまな書類にさっそく目を通していた。

「これからすることは、日本のメタンハイドレートを強制的に取得することだ。あの国は、これまでも数々の侵略をしてきた。そのことを強調して、就任演説に臨ませてもらう」

ジャンクスは、とりあえず部下にこれまでの書類をすべて持ってこさせるように言った。


日露亜の3カ国協定、欧中印の3カ国同盟の結果、ないもの同然とされたアメリカ大陸では、死に体のアメリカの代わりに、カナダがその代わりをつとめていた。

カナダ連邦大統領は、アメリカの石油資源を得て、とりあえず国家としての体制を整えていた。

「…そうか、日露亜、欧中印がそれぞれ手をつないだか…」

「どうするつもりなのですか。我々は、イギリス側に着くべきでしょうが…」

「国内の状況は?」

「革命は起きる気配はありません。失業率は、とりあえず1割5分で落ち着いています」

「問題は、日朝戦争と、アメリカか…」

大統領は、閣議の場で朝の報告を受けていた。

その時、その部屋に誰かが入ってきた。

アメリカ大使だった。

アメリカと国交を結んでいる国は、今となってはカナダしかいなかった。

「実は、そのことできたのです…」

「どうしたのですか?」

大統領は、大使に椅子をすすめたが、大使は拒否した。

「それよりも、アメリカと同盟をくんでもらいたくて、ここに来たのです」

「同盟を?」

「ええ、もっといえば、国家統合です。北米大陸の大半を占めることができる私たちであるならば、新たなる世界を切り開けるでしょう」

「しかし、カナダ側には、何にもメリットがないように思いますが?」

「アメリカと合併することにより、アメリカにある世界最強の軍隊を、自由に動かせるようになります。それを利用し、日本皇国にある資源をとれば、石油が枯渇しても、さらに国家運営ができるということなのです」

「なるほど…たしかに、石油は近未来には枯渇することがすでに分かっている。それから見れば、日本近海に広く分布しているメタンハイドレートは、有望な資源の一つだからな…」

大統領は、閣議の面々をみまわして、決断した。

「わかった。条約を結ぼう。そのことを、アメリカ大統領に伝えてほしい」

「わかりました。必ずや伝えましょう」

大使は、一礼してから部屋を出た。

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