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第43章 戦車
角良から支持を取り付け、斎河率いる戦車部隊は一気に草原を突破した。
「さすが、空軍が露払いしてくれただけはあるな」
「そんなこと言って、空軍の人たちから聞けば「俺たちのほうが主役だ!」とか言い返されますよ」
同じ戦車に乗り込んでいる洗川が照準器とにらみ合いながら答える。
戦車の中は、クーラーが付いているかのように涼しく、高性能の静止装置のおかげで、居住空間には一切振動が来なかった。
さらに、宇宙軍のコンピューター、そして量子コンピューターのウブスナガミと各戦車をリンクさせ、単独でも行動を可能としている。
今回、皇国が投入した戦車は50式といわれ、西暦2050年に制式された物で、無限軌道を備え、さらに、電磁装甲を備えている。
電磁装甲とは、電磁力により敵が発射してきた弾体を無力化をすることを最終目標として開発が続けられてきた装甲の1種であり、50式には強力な電磁波を敵の方向へ向かって放射することにより、金属製であるならば1m以内にきた瞬間に文字通り粉になるという代物だった。
だが、実戦経験はなく、あくまでも実弾演習中の結果であり、どうなるかは全くの未知数であった。
もちろん、そのために装甲も通常通りとなっており、セラミック、カーボンシートをおもに使い、表面には鋼鉄を、その上に先ほど述べた電磁装甲をとりつけている。
150mm滑空弾砲、120mm榴弾砲、それに7.62mm機関銃を搭載しており、それぞれ毎分5発、6発、1500発となっていた。
さらに、戦車内の余剰個所には、手榴弾15個、滑空弾、榴弾、機関銃用の小弾の予備が互いに誘爆しないように特殊な箱に入れられて、厳重に保管されていた。
もしも、空軍の掃射をしても、撃ち漏らしていても下部装甲は戦車の左右へ衝撃波を逃がす構造になっており、跳躍式であったとしても、極限まで凹凸をなくした曲面構造をしているため、すべるように左右へ散っていくという特殊な装甲になっていた。
これもまた、実戦は初めての装甲となっていた。
「でも、大丈夫ですか?」
ウブスナガミなどとつながっている画面をじっと見ている斎河に、洗川が聞いた。
洗川は、照準器を覗き込んで、敵が来たらすぐに撃てるように、右手は榴弾砲、左手は滑空弾砲、左足が機関銃の発射装置にそれぞれつながるスイッチに触れていた。
右足には、左右に曲進するためのレバーが付いており、踏み込めば前進、上にあげれば後進、右足を置いている台から除けたら停止するということになっていた。
「何事にも初めてはある…今回は、俺たちは運が悪かったんだ」
右手に送受信機を持ちながら、前方をじっと見ている斎河が言った。
「かといって、俺たちは軍人だ。国のため、郷土のためだ。生きて帰ろう」
「……はい」
その時、何かをレーダーが探知した。