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第41章 戦場
日本皇国軍の戦車部隊が、森の向こう側に着々と集まっているということは、中国側もすでに知っていた。
「…迫撃砲準備、地雷の敷設と、空軍へ支援の要請を」
中国軍最前線基地の基地司令官が、部下に色々聞いていた。
「全て準備は整っております。迫撃砲弾数も十分であります。地雷原については跳躍地雷を主体とし、対人地雷も大量に混ぜております。空軍の支援は我々が攻め込まれると同時に制空権を確保する目的において発動することになっており、現在、こちらに向かっているところです」
「そうか、ならば大丈夫だな」
そう言って、司令官は何が大丈夫なのかを言わないままに、豪華な本革の椅子に深々と座った。
「敵は何時来るものと推定できる?」
「夜闇に乗じてくるものと想定するのが一番でしょうが、戦車の進撃音は大きく、容易に発見することも可能です。一方で、その音が聞こえることを前提に、昼間に来る恐れもあります」
「要はわからないということだな」
言い返すと、急に空がやかましくなった。
「…誰だ」
司令官が身を乗り出して窓を見ようとすると同時に、伝令兵が司令官室へ飛び込んでくる。
「敵襲です!」
それよりわずかに前、日本皇国本土から飛び立った空軍の航空機4機が編隊を組み朝鮮半島の中部へ向かっていた。
機体は、第2次対戦時に使ったB-29のようであり、どのような投下用爆弾も積むことができるようになっていた。
「こいつ、どうするんですか」
戦闘機の副機長が航空機の腹に抱えている物について機長に聞いた。
「当然、敵の土手腹にぶちかますんだよ。350kg級爆弾4発が4機、それにその他のミサイル、機関銃、小銃などの火器を、出来る限り的にぶちかますんだ。それと、もう一つ指令が来ている」
「なんですか」
わずかに機首を下げ、目的地点に一気に迫る。
「敵と戦車部隊の間には、草原が広がっているんだが、そこが地雷原になっているらしい。それを一掃する」
「我々で出来るんですか?」
「大丈夫だ。やり方ならある」
機長は、離陸前に聞かされたことをしっかりと脳内で反復していた。
「目標空域に着きます。爆撃準備終了しました」
合成音声が伝えてくる。
この合成音声は、すべての日本皇国の空軍所属の機体に搭載されているもので、その声は、どこかの女性声優が元になっているという話である。
「投弾開始、状況を確認しつつ、連続投弾せよ」
機長が僚機に伝えると同時に、敵の前線基地に爆弾を落とした。
一気に落とすわけではないため、1発ずつ、僅かに期待が上に浮く感じが、機体全体に伝わる。
「全弾投下しました」
副機長が、計器を見ながら機長に報告を入れる。
「下の様子を確認してくれ」
「グラウンドのような場所が穴ぼこですね。兵舎も損壊しているようです。司令部には当たらなかったようですが、一部誘爆を起こしている様子です」
上空750mの地点で飛行をしていたが、地対空ミサイルも撃たれることなく、それどころか、敵の火器類の大半を破壊したようだった。
「では、これより継続任務につく。地雷原を破壊するぞ」
「どうやってですか」
副機長が、全僚機に伝えている機長に聞いた。
「機関銃と付属しているミサイル類があるだろ。今回の地雷原は、何も考えずに適当にしたらしいから、一つ爆破できれば、そうとう誘爆するだろうとふんでいる」
「それは、機長がって言うことですか」
「いや、俺の上司だ」
そう言って、機長は副機長に笑いかけた。
戦車部隊は、上空からの支援を受けつつ、森を進撃しはじめた。
その最中に、森の向こう側からの爆音と軽い衝撃波が襲った。
「何が来たんだ…」
最前線司令部は、戦車大隊が先程までいたところに設置されており、そこには、角良司令長官ら、駐留軍の頭脳が集結していた。
「角良司令長官、いますか」
「ああ、聞いているぞ」
それは、斎河戦車大隊長率いる中央突破班からだった。




