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第40章 戦車大隊
朝鮮半島駐留軍に所属している4つの戦車大隊のうち、1個大隊はすでに撃破されてしまっており、残っているのは3つとなっていた。
「ったく、ロシアの方からも援軍をしてくれればいいのに」
「そんなこと言っても、してくれない以上、我々でどうにかするしかないですよ」
中央突破を任された派遣軍第二戦車大隊の大隊長、斎河快朗中佐が、副大隊長である洗川里夢少佐と話していた。
進撃許可は出ているが、一気に進むためにはやはり、駐留軍司令長官たる角良の許可が必要となっている。
「測探させましょうか」
洗川が斎河に言った。
「そうだな、敵の陣地とかも調べておきたい。偵察兵を1個小隊派遣させろ。敵の陣地との距離、障害物等の確認もしておきたい」
「わかりました」
洗川がそう言って、直接偵察兵へ伝えるために、斎河の横を離れた。
入れ替わるように、参謀科の胸章を付けた男が洗川のそばへ来る。
「斎河中佐、おはなしがあります」
「言ってみてくれ」
「この規模の大隊は、すでに敵に見つかっているものと思います。小隊から中隊ほどのちさな部隊へ再編成を行ない、前方突破を目指してはいかがでしょうか」
「もっともな意見だ。そもそも、その予定だからな」
洗川は参謀にそういった。
「参謀科を全員集めてくれ。どのように部隊を分けるかを話し合いたい。それと、司令長官閣下にも、部隊編成後に報告をしておいてくれ」
「分かりました」
そして、参謀と共に洗川は見ていた高台から歩いておりた。
1時間ほどで作戦はまとまった。
ちょうど、派遣した偵察兵も帰ってきて、その報告を受ける。
「報告します。敵の陣地の最前面との距離は、5kmほど。自走砲、榴弾砲、戦車、装甲車等を配置しています。この先には、森が1kmほど続いており、向こうは湖沼なしの草原地帯となって敵陣まで続いています」
「分かった。さがっていい」
斎河が報告をする偵察兵へ言った。
偵察兵は一例をして、幕屋から出て行く。
「では、これから、編成会議を始める。とは言っても、すでにどのように行うのかは大筋は決まっているのだが」
「小隊ごとに一定の間隔を開けて、同時に進撃を行う。1小隊ごとに、戦車は3両とし、戦闘を中心に、後ろは右左に若干ずれて味方に当たらないようにする。それでいいでしたよね」
参謀が確認をした。
「ああ、小隊は10ある。間隔は250m程度としよう」
「分かりました。では、大体全部隊に通達します」
参謀が伝令に伝えに幕屋を出ている間に、慌てて誰かが入ってきた。
「お伝えします、角良司令長官が来られました」
「本当か」
斎河は立ち上がり、各等を出迎えるために、身だしなみを簡単に整えた。
「どうぞ、入ってください」
「邪魔する」
角良は、駐留軍の参謀長とともに、駐留軍第二戦車大隊の幕屋に入った。
「どうしてここに…」
「司令長官たるもの、最前線にて指揮を取り、最善な行動を決定しなければならない。それが、私の意見だ」
斎河が勧めた椅子には、角良は座ろうとしなかった。
「…では、この幕屋をお使いください。私は、中央突破小隊の小隊長も兼ねておりますゆえ、出撃の準備を整えておきます。それと」
斎河は、懐から真っ白の封筒を取り出し、角良に渡した。
「もし、私が戦死した場合、それを開けてください。考えられる全てのことを書いておきました」
「承知した。武運を」
敬礼をした角良に、答礼をした斎河。
そして、斎河は幕屋を出て、戦車へ向かった。