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第38章 最初の交戦


満露国境、朝鮮半島、そして国内と、日本皇国が全面的に戦争へかじを切ってからまる1日が経った時、ワシントンに中央捕虜情報局が正式に設置され、各国の駐北米連合国附駐在武官は、そのまま情報局へまわされた。


日本皇国陸軍駐在武官である志茂瑞位(しもずいい)少将は、派遣されたうちの一人であった。

「さて、昨日今日で大規模な戦闘が起きるとは思いにくいんだが…」

「それはどうでしょうね」

海軍駐在武官補佐である海軍大佐の中岩三郎(なかいわさぶろう)が、缶コーヒーを片手に志茂と一緒に情報局の日本皇国に与えられた部屋の中にいた。

「現状では、まだ捕虜が出てくるような戦闘はないようですね」

志茂が、机の上にドンと置かれている書類を見ながら言った。

「ネットがあるんだから、そっちで送ってくれればいいものを…」

「パソコンだと読んでもらえないことや、送るときにミスをする時があるそうなんで、やっぱり紙がいいそうですよ」

中岩は缶コーヒーを紙が置かれていない机にのせて、部屋唯一の窓から空を見た。

「しかし、待つって言う作業はいやですね。なにかあるまで動けないなんて」

「まったくだ」

そこだけは、二人は同意した。


「ところで、残り2軍の通信員はどこにいったんだ」

部屋の中にいたのは陸海軍だけで、残りの皇国軍である宇宙軍と空軍の代表者がいなかった。

「もうすぐ来るっていう話でしたけど、そういえば来ないですね」

中岩が空になった缶コーヒーの缶をピラミッド状に壁に立たせているところだった。

「…何をしてるんだ」

「いや、暇でしたんで、飲んだ空き缶を立たせて遊んでいたんです」

「何段あるんだ…1、2、3…14段か」

「そうですね」

中岩自身はあまり気にしていないようだった。

「で、結局他の奴らはまだ来てないっていうことか」

「そういうことです」

ちょうどそのとき、扉が勢い良く開かれて、上着を腕に引っ掛けた二人の軍人が飛び込んできた。

中に人がいるのを見て、あわてて敬礼をする。

それを見て、志茂と中岩も敬礼をした。

「すいません、中央捕虜情報局日本皇国部ですよね」

「そうです、どちら様ですか」

元に戻ってから、志茂に聞いた。

「駐北米条約連合宇宙軍駐在武官の、小水庄造(こすいしょうぞう)です。階級は少将になります」

「空軍より派遣されました、比嘉磐沙(ひがいわさ)統空中将です。自分は本庁からの出向という形を取っています」

「比嘉中将がこの中の最高位と言うことになります。自分は、駐北米条約連合駐在武官、志茂瑞位陸軍少将です」

「同じく、駐在武官補佐の中岩三郎海軍大佐です。よろしくお願いいたします」

最上位の階級である比嘉に対して再度敬礼をしてから、4人とも部屋に入った。


「…で、問題はこれからか」

「ええ、実際に捕虜が生じるような戦闘が起きない限りは、書類整理で終わりますので」

比嘉に業務の内容を説明していたのは、志茂だった。

「…一つ聞きたいんだが」

「なんでしょうか」

比嘉が、壁際に指を指して聞いた。

「なぜ、缶コーヒーがあんなに積み重なっているんだ?」

「いえ、暇でしたので、ついつい飲んでしまったのです。それを重ねているウチに…」

「そうか、後で片付けといてくれ。今すぐじゃなくてもいい」

「了解です」

志茂に指示をしてから、座っている椅子の背もたれに深々ともたれた。


外が騒がしくなるにつれて、皇国の大使館からも電話が入るようになった。

比嘉が受話器を置くと、神妙な面持ちで部屋にいる面々に話す。

「たった今、朝鮮半島で中国軍による大規模な侵攻が確認された。これからが、我々の出番となる。それと同時に、今回の戦争で最初の捕虜が捕縛されたという情報も入ってきた。名前は、張雲寅。自称中国特殊部隊所属だそうだ。誰か中国側に話を通してくれ」

「職員を通じて話をさせます」

すぐに答えたのは、メモを取っていた中岩だ。

「本国へ対しては、俺が話をしておく。以上だ」

いよいよ始まったかという感覚が、4人を包み込んでいた。

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