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第36章 諜報
朝鮮半島に駐留しているのは日本皇国軍だけではなかった。
北部朝鮮に衛戍している中国軍は、インドや欧州からの最新兵器を取り入れ、皇国がいくら攻めてこようが、完全に跳ね返させるような強固な防衛体制を整えていた。
しかし、相手がどのような武器を持っているのか、どのように攻めてくるのかが分かれば、さらにいいことはどこでも同じだった。
「ならば、斥候を出してみてはいかがでしょうか」
衛戍司令官が聞いているのは、司令部にいる将校たちにだった。
今回は日本皇国側の状況をどのように知るべきかということについて、話し合っていた。
「それが一番早いだろうな」
司令官は斥候を出させるために、歩兵部隊の中にある特殊部から数名を連れてこさせた。
その中で、もっとも腕がいいという評価を出されている張雲寅を派遣することにした。
司令官直々に、各将校を前にして派遣の辞令書を読み上げ、任務の詳細を知らせた。
「…やってくれるか」
「無論です。引き受けないことがありましょうか。必ずや任務を遂行いたします」
装備一式を受け取ると、すぐに張は衛戍地から飛び出し、38度線を抜けて日本皇国軍の基地へ向かった。
その姿が衛戍地の司令官室から見えなくなるとすぐに、司令官が指示を出す。
「全軍に通達、日本皇国より宣戦布告ありとの情報が本国より入った時点で、進軍を開始する。第1種戦闘態勢を取れ」
「張はどうしましょうか」
「構わん、帰ってこれれば上出来だ。情報が一つもないままでも、攻撃することは可能だ」
司令官がその場にいた将校全員に向き直って再び言った。
「命令だ、早急に準備せよ」
かかとを90度につけ、体を15度まで倒してから、再び戻した。
その間、司令官は答礼をした。
将校が部屋から出た数秒後に、連絡官が入ってきた。
「失礼します。本国より連絡がありました。日本皇国より宣戦布告があったとのことです」
「了解した。本国へ返信、これより全軍を持って朝鮮半島南部へ進攻を開始する」
「了解いたしました」
連絡官が部屋から出ていくと、司令官は、中庭集まりだしている歩兵たちを眼下に、歪な笑みを浮かべていた。