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3.

第4章 そして始まる戦争


戦争が絶えなくなったこの世界。どうにか国内で戦争を起こさずに、体裁を保っていたヨーロッパ連邦でも、何か不穏な空気が漂い出した。


閣議にて、大統領に対して軍部の関係者が戦争を迫っていた。

「なぜですか!なぜ、日本皇国に対して宣戦布告をし、極東の安定を図らないのですか!あの地域には、今後の代替燃料筆頭格であるメタンハイドレートが大量に眠っていると聞きます」

「黙れ!軍部の暴走は許さん!日本皇国は、現時点で世界で唯一量子コンピューターを開発した国だぞ!そのような国に対して戦争をしたところで、どのようになるかはわかるだろ!」

大統領は、閣議のテーブルをダンと叩くと、一言、冷たく言い放った。

「日本とは戦争をしない。それが公式見解だ。これ以上話をするようだったら、おまえは首だ」

軍部代表者は歯ぎしりをするしかなかった。


省舎にもどった彼は、部下に対していった。

「…1週間後、現在の大統領を倒す」

「ジャンクス大臣。それは、クーデターか革命を起こすということですか?」

「まさしくそうだ」

部下は、心配して言った。

「世論は、世論は大丈夫でしょうか」

「現在、不況の嵐が駆け抜けている。失業率は3割を超え、さらに上昇の一途をたどっている。このような状況を放置し続けている現在の政権に対して、国民は不信感を抱き、支持率も低下し続けている。このような状況こそが、革命を成功させる機会なのだ」

「…1週間後ですね」

部下は、ふんずりかえっている代表を見て念を押した。

「ああ、1週間後だ」

そして部下は、国内にある全部隊に対して、そのことを指示した。


翌日、日本皇国軍は、旧韓国領土の制圧を宣言。

残りの朝鮮王国領土を占領することをもってしてのみ、この戦争を終わらせると信じていた。

一方、朝鮮王国が戦争勃発時から援助を依頼していた中国軍は、ようやく援助に駆け付けた。

このままの勢いで進まれると、旧満州国のように再侵略を受ける可能性があると見越したからだ。

中国最高司令部総司令官|(旧役職名は中華人民共和国中央軍事委員会委員長)である楊趙益は、国家主席である王東栄に対して説得を続けていた。

たった二人しかいない会議室に、楊の声が聞こえてきた。

「よろしいですか。朝鮮王国が滅ぼされれば、日本皇国は間違いなく我が国へ攻め来るでしょう。満州国のように、再分割を要求され、あの屈辱の日々を再び送る可能性もあるのですよ」

「…なぜ、そのようなことを断言できる」

王は、静かに聞いた。

「日本皇国は、鉱物の博物館と称されるほど、採取できる種類は豊富です。しかし、それぞれの絶対量を考えると、非常に少ないのです。その中でも、現在日本皇国が欲している最も重要な資源が、石油です」

「我が国の東北部で発見された油田だな。東シナ海大陸棚の問題も、いまだに残っておる」

「その両方を保護し、さらには日本皇国をこの世界から蹴散らす必要があります。歴代の皇帝の方々が許可を出したのにもかかわらず、唯一反乱をおこした国。それが現在の日本皇国です」

「…東北部へ攻めいれば、次は我が国とロシア、両方を相手にしなければならない。日本にそのような国力があるのか」

王が心配そうに聞いたが、楊はあっさりと返した。

「そのとおりです。日本皇国は、その国力を有しています。世界5大軍事国として成立している日本皇国です。我が国と同時にロシアと戦争をしても、自国防衛は難なくこなすでしょう」

「ならば…」

王は本気で心配を始めたが、楊は続けた。

「しかし、さらに味方が加われば、話は別です」

「どこのことを言っているんだ……」

「ヨーロッパ連邦です。現在、印度と同盟締約の準備をしていますが、わが国もそれに便乗する形で同盟を組むのです」

「三国軍事同盟ということだな。それはヨーロッパ側も了承しているのだろうか…」

「1週間以内に、政変が起きます。その首脳部は、わが国とインドとの同盟を最優先で考えていると、言質を得ています。必ずや、わが味方となってくださるでしょう」

「…わかった。だが、わが国の他地域はどうするつもりだ」

「なぜ、核を持っているか知っていますか?」

楊は、平然と聞いた。

「…楊よ、それは許可できない。核戦争を引き起こすつもりか」

「それが必要であるならば。中国共産党にそれが理であると確信していますので」

それだけ言うと、王に判断を仰いだ。

王は、核使用は許可できなかったが、欧印中の同盟については許可を出し、さらには、東シナ海の領海をさらに守護するように厳命を下した。

楊は、一礼すると、会議室から出た。


同日、日本皇国はアジア連邦(AF)に対して、会合を開くことを頼んだ。

それは、来る中国・ロシアとの戦争に関することだった。

事務官級会合では、日本代表として山口千夏。

AF代表として、クアントル・シャンバルが、シンガポールの某ホテルで会合を開いた。

ほかにも随行員がいたが、基本的には、この二人が日本語で話していた。

「はじめてお目にかかります。山口千夏といいます」

「はじめまして。クアントル・シャンバルです。これからよろしくお願いします」

そして、それぞれ3人の随行人とともに、席に着いた。

「それでは、さっそく本題に入りましょう」

クアントルが言った。

「ええ、私もそれがいいです。今回は、日亜の連合についてですが…」

「AFとしては、日本皇国と連合体として協定を結ぶことは、やぶさかではありません。しかし、もしも協定を結んだとするならば、われわれにどのような利益や不利益があるのかをお教えいただきませんか」

「中国、印度、ヨーロッパは、それぞれの同盟を模索しているという話です。しかし、ヨーロッパ地域は、現在政情が徐々に不安定さを増しており、近頃革命がおきそうな情勢です。しかし、印度、中国はそのような状況ではなく、むしろ、中国東北部の新たに発見された石油資源をめぐって何らかの密約を交わしている可能性があります」

千夏は、一気に言った。

「…ならば、ロシアはどう動くでしょうか」

「おそらくは、石油資源を中国側から分捕りたいでしょう。昨今の史上最悪の大不況の時代の中で、唯一安定している資源として石油は存在していますから」

「なるほど…では、中国側は日本が再侵略をすると思っていると…」

「そういうことです。さらには、その先にある石油資源は、確かにのどから手が出るほどほしいです。しかし、それを戦争によってとるつもりは毛頭ありません。朝鮮、中国が思っているほど、私たちは過去のような軍国主義に戻るつもりはありません」

千夏は堂々と言った。

そして、クアントルが言った。

「わかりました。日亜間での協定を、結びましょう」

「はい」

千夏とクアントルは握手をした。

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