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第34章 月面県戦時会議
戦争状態となった以上、日中間の状態は最悪となっていた。
当然、条約を結んでいる欧印も中国側に立ち日本に対し戦争状態に入ったことを布告。
月面においても、地球上と同じような争いがおこることが容易に予想された。
「月面県においては、欧州との戦いが予想される。警備を厳重に、外部へ出発する際は、宇宙軍が警護をしてくれることになっている。月面上では領土として確定されている範囲に関しては、万全の警戒と武力衝突を懸念して、前日までに武器や食料などをできるだけ搬入しておいた。他に質問は?」
円卓の会議室で、知事が集めた各機関長や自治体の長に説明をしていた。
「北米条約連合の月面基地はどういう対応になるのでしょうか。欧州と一体化しており、欧州側の意向も強く反映される恐れがあります。そうすれば、そちらの基地の分の武器も使用することができ、我々は2対1の戦いを強いられるようになります」
「北米条約は、本国からの命令を第1に考えることになっている。それは、他の月面基地の長も同じこと。もっとも、ここは他県と同じように考えるべきだが」
「つまり、彼らは欧州へと同調せず、中立であることを維持し続けると」
「食料や水といった生活必需品の供給は続けるだろうが、武器等の供与はないと考えている」
「欧州連盟がこちらへ攻撃を仕掛ける恐れはあるのでしょうか」
「十二分にありうるだろうが、彼らも人間。居住区域に対しては攻撃がないものと、互いに覚書を交換している。もっとも、片方が攻撃を加え、結果的に居住区域へ爆撃を受けたとしても、国際世論は非人道的だと言って一気に反戦へと動かすことができるだろう。居住区域が居住不能なほどまで汚染されたとしても同様だ」
「…人為的に起こすつもりではありませんでしょう」
「知事として、この場にいる非軍属の方々の命を守らなければならない。軍属の方々に対しては、宇宙軍月面総司令官殿が総指揮をとってくださることになっている。当人は、すでに動かれ始めておられるため、この場にはいないが、話し合いに参加するということもあり、無線で通信を入れる事が出来るようになっている」
「無事に、このたびの戦乱を乗り越えることができるでしょうか…」
「知事としては、全力をつくすつもりだ。各方面、何が起きても不思議ではないことを留意して、注意を怠らないようにして欲しい。よろしく頼む」
知事は、月面県に有る主要な機関や行政組織の長たちに、注意喚起をくり返し促した。
会議室から誰もいなくなってから、一人の女性が入ってきた。
「知事、大丈夫ですか」
「ああ、私なら大丈夫だ」
副知事として宇宙軍をまとめ上げている女性が、スーツ姿で入ってきた。
「交戦法規を見直しておくようにと、おっしゃられていましたが…」
「ああ、陸戦、海戦、空戦の国際条約を見直しておこうと思ってな。特に、空戦のことは、宇宙空間にも適応すると言うことに新しく解釈されたから、その方面を重点的にな」
副知事が持ってきていた黄土色のファイルに挟まれているプリントの束を見て、一瞬見る気を無くしたようだが、知事はその束を受け取ると、ふたり一緒に部屋を出た。