表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/117

2.

第3章 迫りくる足音


ウブスナガミを創りだした日本は、その性能をいかんなく発揮し始めた。

一方で、そのようなコンピューターを創りだせない国々は、とにかく日本に追いつくことを目標にしていた。


ヨーロッパも、そのうちの一つだった。

ヨーロッパ連邦として新たに成立した欧州国は、昔EUと呼ばれていた組織をそのまま引き継いだ。

大統領として選挙に勝利していた、ヴァイシュ・マルコイスは、そのことを憂慮した。

「日本皇国は、量子コンピューターを正式に稼働したそうだ…」

「わが国でも、現在、最大限の努力をしています。1年以内には、実験段階から抜け出て、実用段階へと入るでしょう」

「それでは遅いのだよ、技術省大臣。それでは、日本に負けてしまう。第2次世界大戦来、日本に対していろいろと苦慮してきた。現在でも、日本の技術は我々を上回っている。我々が日本に勝つことができるためにはどうすればよい?」

そのとき、その場にいた軍服を着た人が手を挙げた。

「すこし…宜しいでしょうか」

「どうした…おまえ、今まで見ない顔だな」

「はい、私もこの場に出るのは初めてです。私は軍服を着ているのでおわかりになられると思いますが、軍務に服するものです」

「そのような者が、なぜこの閣議に?」

「はい、私が所属しております、陸軍兵器研究所では、現在、世界をどのようにすれが制することができるかを研究しております。その中では、無論日本皇国についてもあります。我々が、日本皇国に対して行うべき行為は、二つあります」

大統領はそれを遮った。

「1、日本と仲良くすること。2、日本を攻撃すること。このうちの二つ以外であるならば、意見を言いたまえ」

「はい、その通りでございますが、少し違うのです」

「違う?」

閣議にいた人々は一様に首を傾げた。

「まず1についてですが、日本と仲良くするということよりも、日本をたたく相手と仲良くするべきだと思われます。日本は資源小国であり、大半を輸入に頼っています。第2次世界大戦の発端も、今は亡きアメリカが主導して、日本に対し、当時は大日本帝国ですが、石油などの資源を輸出禁止にしたことが、大きな原因と言われています。そのようにして、日本皇国を干上がらせる作戦もあります」

「ならば、2のほうに関しては?」

「日本を攻撃するのは賢明とは言えないでしょう。日本皇国はすぐさま反撃してきます。第2次世界大戦のとき、不可能と言われた戦艦空爆を成し遂げた国です。そのことを忘れてはなりません」

彼は眼光鋭く言った。

「ならば、我々はどうすべきなのだ?国際連合は機能不全に陥り、すでに世界を統括する機関としての威厳を失っている。日本と対峙するためには、いかなる方法をもってしても我々の技術力では対抗しきれん」

大統領は、言った。

「1週間ほど、時間をいただけますか?」

「その間に何をするつもりだ」

「そのときになればわかりますよ」

そして、大統領やその他の面々に対して敬礼してから、閣議場から帰った。


1週間の時が過ぎた。

その間にも、朝鮮王国は竹島領有を正式に宣言した。

日本政府はそれに対し、外交ルートを通じて抗議を行い、24時間以内に撤回しない場合は、武力奪回すると通告した。

西暦2030年、欧州側も決断の時が迫っていた。


閣議場にて、大統領と面と向かって研究所の人がいた。

「さて、君の答えは?」

「わたしの答えは、日本以外と仲良くすべきということです」

閣議にいた人々は、躊躇した。

「こ、このご時世、どの国と仲良くしろというのだね」

「中国、インド、北米地域。ただ、朝鮮王国は避けるべきでしょうね」

すぐに、国名をいくつか挙げた。

大統領は悩んだ末に決断した。

「諸君、我々はインドと同盟を組む。すぐに外交ルートを通じてそのことを伝えてくれ」


翌日、欧印同盟に関する実務者協議がすぐに行われた。

それと時を同じくして、日本は朝鮮王国に対し竹島奪還作戦開始を宣言。

日朝戦争となった。

それを傍観している欧州だったが、旧北朝鮮領にあるレアメタル採掘だけは、しっかりと終わらしていた。

「朝鮮半島に用はない、と」

大統領は言った。

「確かにそうです、ですが、日本にこのまま暴走を許しておくわけにもいきません」

彼は言った。

「ならば、どうすべきなのだね」

「早急に中国とも同盟を結びなさい。欧印中三国同盟を結び、日本に対し外交圧力をかけるのです。中国は、日本に対し恨みを抱いているものが多数います。ひとたび戦争となれば、国中から援軍をかき集めてくるでしょう」

「はたして、その通りに行くかな…皆はどう思う」

大統領は、閣議メンバーに聞いた。

ある女性が、手を挙げた。

「どうしたね、国家情報総局長」

「実は、去る情報筋から入手した情報ですが、中国からいくつかの自治区が独立の準備をしているとのことです。すでに独立宣言をしており、チベット共和国として成立した旧チベット自治区をはじめとして、ウイグル、内モンゴル、さらには台湾も独立準備を整えたということです。そのような弱体化しつつある中国と軍事的な同盟を結んだところで、我々に利益はないと思います」

「なるほど、では、インドと同盟を結んだうえで、現状況を考慮し、今後を決定するということだ。それでよろしいか」

大統領はその場にいる全員の了承を得て、閣議を解散した。


1か月後、日本は竹島の奪還および朝鮮王国が残した残骸の撤去をすべて終了させ、新たに自らの手で作った要塞に軍を常駐させていた。

国境侵犯船は、無許可であるならば撃沈をする旨の通告を沿岸各国に通達していた。

日本皇国政府は、次なる目標を中国及びロシアの南下阻止とし、朝鮮半島を再占領することを目標とした。

だが、そのためには、諸外国の承認が必要だった。


現在、この地域は混とんとしていた。

朝鮮王国は一時はレアメタルによって栄えていたが、そのほぼすべてを取りつくしてしまった今となっては、だれも見向きもしない最貧国へと再び転落した。

現在は、国家の威信をかけ再興中だが、このような国とはだれも付き合おうとはしないだろう。

問題は、そのすぐ北側にある広大な土地だった。

中国東北地方とロシア極東地域の国境付近で見つかった巨大な油田は、全世界の需要を10年分賄える量であった。

それを狙い中国・ロシア両政府は、戦争状態に突入した。

アジア諸国は、自国優先主義を取り、他国のことを顧みる余裕がだんだんなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ