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26.

第27章 東京


ロシア領土に駐留している皇国軍と月面県に対して連絡をした、外務大臣と軍務大臣は、東京で閣議に臨んでいた。

「我々に協力を表明しているのは、南アフリカおよび協定国側ですね。条約連合並びに連合国の方々は、96時間後に態度を表明することになると思います。最低でも欧州連盟は敵方へと回るでしょう」

軍務総大臣が閣議の場で閣僚全員に向かって報告をしていた。

「昔のことだから、記憶にない人もいるだろう。すこし整理をしておこう」

円形のテーブルの真ん中にある机に埋め込まれているテレビ画面に、日本を中心にした世界地図が表示された。

欧州連盟は青色、北米条約連合が赤色、日本皇国が黄色をしており、それぞれの国に与する国ごとに、それぞれの色を薄くした色が塗られている。

「欧州連盟側は、中華人民共和国、インド共和国、北アフリカ共和国、中東連盟、朝鮮王国北部で、北米条約連合側は、南アフリカ連盟、中米連合、南米経済共同体だったな」

「残りは、我が国に与しています。南アフリカ連盟は、北米条約連合から欧州連盟へ変わる恐れもはらんでいるので、そうなるとアフリカは欧州側につくことになります」

「残り90時間になりましたが、欧州連盟側以外に我々に対して反応を示した国はありません。北米条約側は、どちらにつくのか、まだ不透明な部分も多いため、どちらに与してもいいように準備を整えております」

御前会議へ持ち込む前に、閣議での最終の打ち合わせが続けられていた。

軍務総省大臣、財務省大臣、総理大臣、外務大臣などが閣議用の円形テーブルに集まっていた。

「さてだ。軍備の状況はどうなっているんだ」

「6時間前に出された皇紀2740年勅令591号により、中露国境に派遣されていた派遣団が正式に第10師団となりました。一方で、アジア連邦に対して派遣されていた臨時混成団に対しては、第15~18旅団として新たに指定しました。現在、航宙空母"大和"が我が国とロシア、中華民国、チベット・ウイグル共同連邦、満州国の上空に、アジア連邦、オーストラリア、ニュージーランド、大洋州国家同盟上空には"畿内"を、最後の"西海"はどこにでもすぐに行けるように待機されています。7つある海軍師団ごとに空母を一隻ずつ配備しており、巡洋艦、ミサイル駆逐艦、潜水艦など艦隊を組織しています」

「複数の艦隊を統合する連合艦隊に関しましても、すでに準備が出来ています。互いの船のメインコンピューターはウブスナガミと接続されていますが、独自の指揮系統も予備として導入されています。ウブスナガミが破損し通信が不能となったとしても、別系統で艦隊同士を結ぶことにより、行動を続けることになります。再度接続できた時に、全ての情報を一気に送信し情報の同質化をはかります」

2重3重の防護策をとることにより、リスクの発生時において速やかに別系統へ移転することが可能になっていた。

「敵方へなる、欧州連盟の装備はどうなっているんだ」

「現在確認できるのは、航宙母艦2隻、航空母艦5隻、その他艦隊が5師団分ですね」

「航空母艦よりも問題なのは航宙母艦に関してだな」

航宙母艦は、航空母艦の一種で宇宙に存在している。

宇宙から地上へ向けて攻撃を加えることを目的をしていて、母艦という名の通り、内部には戦闘用の宇宙船を幾隻も詰めるような構造になっている。

日本皇国が持っている航宙母艦は3隻のみであり、大和型である大和・畿内・西海だった。

3隻合計で98隻母艦内に積めることが可能になっており、戦力としてはもちろん無視できない。

内部の1隻ずつが、テニスコート半面と同等の大きさで、空対空ミサイルやレーザー銃を主要武器として装備していた。

だが、それは他国も同じコト。

基本的な装備のほかに、どのような武器を詰め込むことができるのかが、各戦闘航宙機の特性になっていた。

さらに、航宙母艦はどこの国であったとしても、今や、宇宙空間の立派な領域となることが出来るのだった。

「宇宙ステーションを有している我が国だからこそ、他国の宇宙開発に興味が向いてしまうな」

「協力している国にとってもですよ」

閣議と言いながら、徐々に変わっていっているのは気のせいではないだろう。

「さて、ここからが最大の問題だ。アメリカはどう反応すると思う」

「北米条約連合ですね。欧州側につくかどうか…そこが、これからの戦争を大きく決定づけるでしょう。なにせ、あの国は未だに大国と称されるような巨大な国の一つです。日本皇国、欧州連盟、北米条約連合の3極がアメリカ崩壊後の世界を支えてきました。我が国はこれまでも様々な危難を取り除くことが出来たのですから、北米が欧州へついたとしてもおそらくは生き残るでしょう」

外務大臣は楽観論を唱えていたが、それに軍務大臣は反対した。

「そうは言われても、第2次大戦時の欧州に我々の仲間である『ドイツ第3帝國』があったからこそ、4年間も戦えたと言えるのです。アメリカの軍が大東亜地方と欧州地方へ振り分けられたすきに、こちらも存分に独立の芽を植えることが出来たのですから。しかし、今回はそのような仲間はおらず、どうなるか……」

「仲間を作れば、どうにかなると言うことか?」

総理大臣は軍務大臣に問いただす。

「いえ、欧州側と北米側は、キリスト教という宗教で強く結ばれています。宗教は国の方向性も決める時が多々あり、その面から言えば彼らは敵対するはずがない。しかし、我々が勝つ為には、彼らを引き離す必要があります。離間工作を行うことを強く勧めます」

「スパイ行為を行えと言うことか。しかし、誰が行うのだ。我々には『CIA』のような強力な組織はなく、間者部隊として陸軍の近衛師団のごく一部、10数人しかいないのが実情だが」

一同が悩んでいる時、閣議室の扉からノックの音が聞こえてきた。

「失礼します、北米条約連合大使がお会いしたいと申しておりますが…」

閣議室内にいた面々は、とうとう彼らが日本皇国に対して国交断絶を決断したという話だろうと覚悟した。

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