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21.

第22章 建設計画


昔は圧倒的な軍事力・経済力などで"超大国"とも呼ばれていたアメリカだったが、今では単なる大国の地位に甘んじていた。

だが、北米条約連合となった今だがそのような地位にいつまでもいるわけはなく、彼らもまた、月へ基地を作ることを計画していた。


「先日の会見をみんなは聞いたと思う」

大統領が閣議の場で閣僚に尋ねる。

「欧州が、宇宙開発へ正式に動き出した。その波に、我々が乗り遅れてはいけない。有人宇宙飛行こそは2番手に甘んじたが、我々は月へと人類で初めて人を飛ばした国の末裔だ。今回の月競争も、我々が勝たなければならない」

大統領が檄を飛ばす。

「そこで、一つ聞いておきたい。国防総省大臣、宇宙開発へはどれほどの予算がかかる?」

「我々が試算したところによりますと、恒久的な施設を造る場合、およそ設置に1500億ドルほど、維持に100〜300億ドルほどかかると見込んでおります。なお、維持費は1年間で試算しております」

「やはり、それほどかかるのか…」

大統領は、何かしら考え込んでいるようだが、急に顔をあげると言いきった。

「5年以内に、月に恒久設備を設ける。欧州側にも通達してくれ。ほぼ同時進行で行わなければ、日本側と共同戦線がはれないからな」

「分かりました」

外務省大臣が、一礼してから先に閣議室から出ていった。

「さて、次の議題だが、我が国は経済がいまだに旧G8諸国の中で低迷を続けている。どのように回復させる?」

アメリカが没落してから、G8は崩壊した。

今では、それぞれ好き勝手にやっている感も否めない状態であり、国際協調は徐々に無くなりつつあった。

「欧州は一致団結し、我々が行った『ニューディール政策』に良く似たことを行っております。すなわち、大型公共工事を連続して行い、雇用を確保しつつ、一般企業の体力増強を促すのです。日本ではそのようなことは行われず、技術革新による新たな産業の確立、国からの補助金による雇用者の給与補填、消費を促すための数々の政策により"善い循環"といわれる消費サイクルを発生させるなどを行っております」

善い循環というのは、所持金を増やすことにより購買意欲を向上させ、実際に物品を購入させることにより企業に対し利益を増やさせ、その利益を給料として消費者へ還付するという、一連のサイクルの名前である。

ここでは、便宜上そのように言っているだけであることを、お忘れなく。


「"善い循環"への道筋、月面きつの建設並びに南米・南アフリカ地域に対する積極的アプローチを取ること。以上を決議して、今日は散会とする」

大統領がそういいきって、部屋から全員を追い出した。

しばらくしてから副大統領と一人の職員を呼び出すため、内線電話に手を伸ばす。

数分もしないうちに副大統領が、30分ほどしてからその職員が大統領執務室へとやってきた。

「お呼びでございましょうか、大統領閣下」

「そこに座ってくれ」

すでに来ている副大統領のすぐ横に、座るように職員に指示をした。

二人並んで座ってから、大統領は切りだした。

「今や、日本皇国は地球で1番の先進国となっている。もちろん、神の加護がある我々がいずれ追い付くことは明白である。その間、我々とともに日本皇国を押さえつけるための力が必要になる」

「"要石"のような存在ですか」

「副大統領、いいところをついている。問題は、そのかなめ石役をどこが引き受けてくれるかだ。そこで、君の出番だよ」

「欧州にその役を任せると、そういうことですか」

職員の女性が、大統領に尋ねた。

「ああ、そのために国土安全保障省欧州部門部長の君を呼んできたんだよ」

そういうと、大統領はクリアファイルに入れられた数枚の書類を渡す。

「最高機密文書、そのうち日本皇国と欧州のつながりを考察したレポートだ。それを読んでおいてくれ。計画の詳細は、おって連絡する」

大統領は駆られ二人の頭の少し上を、何かを思い出すかのように見ながら最後に言った。

「日米戦争以来、幾年月。本土爆撃されてから同盟国となり、さらに離れていった神秘の国」

「大統領閣下……」

「だが、我々は勝たなければならない、最終的には……」

地平線へと落ち行く太陽だけが、これからのことを知っているふうだった。

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