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14.

第15章 月探査競争 (3)


会議が一時中断されたため、議場からいったん全員が外へ出た。

「さて、どうなるでしょうか」

日本皇国代表が言った。

「…今も昔も、旧五大国、今じゃ数も減って4つになりましたが、その方々が力を握っています」

国際連合常任理事国だったロシア、アメリカ、イギリス、フランス、中国がひと固まりでいた。

今では国の名前も変わったりしており、ロシア、北米条約連合、欧州連盟、中国になっている。

「何を話してるんでしょうか」

「彼らのことだ。おそらくは、我々のウブスナガミをどうやって破壊しようかを話し合っているのだろう」

大使は、紙コップに入った緑茶をすすって、その光景を見守っていた。

「だが、こちらも黙っているわけにはいかない。彼ら以外の国々と接触を図ってみる必要があるな」

緑茶を一気に飲み干すと、近くにあったゴミ箱に捨て、ほかの国と会うために動き始めた。


四大国といわれる常任理事国の大使は、それぞれの裏を抱えながら話し合っていた。

「日本皇国のウブスナガミ…」

中国大使が、口火を切った。

「破壊したいとお考えなのでしょうか」

ロシア大使が冷たく言い切る。

「それは、確かにそう思うこともありますが、ウブスナガミのような量子コンピューターを作り上げたのは、唯一日本皇国のみなのです」

北米条約連合代表が、ロシア大使のすぐ横でワインを飲みながら言いだす。

「誰も作ったことがない量子コンピューター。いまでは、人格も備わっているといううわさもあるぐらいだが、誰も知らない」

欧州連盟代表が小声で言った。

だが、その言葉は事実ながらも誰にも相手されず、ただ、宇宙条約の話に移った。

「時におたずねしますが」

中国大使が連合代表に聞いてくる。

「なぜ、今頃宇宙条約を改正するのでしょうか」

「すでに空文化している条約の改正意義…単純なものですよ。日本皇国は国際法を尊守することで有名です。何か起してからでは遅すぎるのですよ」

「…まさか、日本皇国と交わろうとお考えなので?」

連合代表はしれっとして答える。

「いずれは。しかし、今はその時期ではないのです…今は、ね」

意味ありげな言葉を残し、連合代表は歩き去った。


「では、全員お揃いになられましたね」

国連事務総長が見渡していった。

「これより、決をとります。挙手をお願いします。まず、本改正に賛意を表する方」

日本皇国を筆頭とする協定国は手を挙げなかったが、残りの国々は賛成を表した。

「では、否意の方は」

今度はその逆だった。

「賛成多数とみなします。よって、本改正案は可決されました。では、散会とします」

事務総長は、何も言わずにそそくさと帰ってしまった。


建物の外は、青空が広がっていた。

「…大使」

日本皇国代表として来ていた大使は、ぼんやりと煙草に火をつけた。

「…このままだと、戦争が起こっても不思議じゃない…いや、それを狙っているんだな」

紫煙をくゆらせながら、空を見上げていた。

「第2次日中戦争まで長い間、私たちは太平の世に甘んじてきた。そろそろ、孔雀も怒るときが来たのかもな」

謎の笑みを浮かべながら、大使は言った。

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