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13.

第14章 月探査競争(2)


月を目指しているのは、中国や日本だけではなかった。


アメリカ合衆国領、ワシントン。

カナダ大統領との会談にて。

「さて…」

アメリカ大統領が切り出した。

「再び、月に行くための研究は、すでに進んでいるが…問題は日本皇国だ」

「ええ、日本側は、今なお月面基地を建設するという計画をあきらめたわけではありません。それに、無人の月探査機を複数機送り込み、GPSのように運用を開始することを、各国に通達しました」

「中国側から、ウブスナガミが月のどこかにあるという情報を得ている。もしも、詳細な座標が欲しい場合は、中国側に対し援助をすることとかかれた文書が送られています。どうすればいいのだろうか…」

アメリカ大統領は悩んでいた。

そのとき、誰かが入ってきた。


「失礼します。中国大使がお待ちですが…」

「ここに通してくれ」

アメリカ大統領がそう伝えると、すぐに本人が歩いてきた。

ねっとりとした仮面のような笑顔を浮かべ、内心は何を考えているか分からないような何とも言えない雰囲気だった。

「これはこれは。カナダ大統領閣下、アメリカ大統領閣下。お会いできて光栄でございます」

「単刀直入に聞こう。援助とは、何が欲しいのだ」

さらに、ニヤニヤ度が増した。

「単純なお話です。日本皇国は、元をたどれば、わが国の領土。卑弥呼の時代より朝貢している民族の末裔でございます…」

カナダ大統領が伝えた。

「日本皇国領がほしいということか?」

「まことに物分りがよろしいご様子で」

恭しく跪くと、二人に擦り寄った。

「ところで、ご返事のほどは…」

「朝鮮王国だった部分はやれるが、他の部分はやれん。日本皇国は、世界で必要だ。一国に任すことは出来ん」

「と、申しますと?」

大使は首をすこし傾けた。

アメリカ大統領は伝えた。

「本国に言ってくれ。宇宙条約締約国会合を開きたいと。すこし変えておきたいことがある」

大使は一度礼をしてから、部屋を出た。


翌月。

現在独立している国々、日本、ロシア、アジア連邦[AF]、中華人民共和国、インド、中東連盟、ヨーロッパ連邦改め欧州連盟[EU]、北アフリカ共和国、南アフリカ連盟、北米条約連合、中米連合、南米経済共同体、オーストラリア、ニュージーランド、大洋州国家同盟、台湾独立共和国改め中華民国、チベット自治共和国・ウイグル自治共和国改め、チベット・ウイグル共同連邦、中国北東部独立国改め満州国がそれぞれの代表を連れて、ニューヨークに集まっていた。

「それでは、宇宙条約締約国会合を開きます」

議長は、国際連合事務総長がしていた。

「本会合は、北米条約連合が提起した条約変更について話し合う場であります。他の議案は一切行う予定はありません。では、北米条約連合代表、提起案について説明を願います」

事務総長は、北米条約連合の代表であり、国際連合首席代表に話を振った。

彼は立ち上がり一礼して再び座ってから、朗々とした口調で話し始めた。

「私たちが今回、条約の変更点について提起した案では、宇宙で建造した人工物は、その建造した国に権利が帰属するということにします。また、衛星などの軍事利用に関しても、現在批准している国に関してのみ権利が生じることにしたいと思います。さらに、月など、人類と何らかの形で交信が出来るほどの知的生命体がいない惑星などに関しては、先入特権が働くものとする文言を一言入れます」

「それでは、議論に移ります。意見等、何かある方は」

事務総長が円形に居並ぶ代表者たちに聞く。

日本皇国代表がゆっくりと手を上げる。

「お聞かせ願いたい。さきほど、軍事利用を行ってもいいという権利が生じると言ったが、それは宇宙空間上で、戦争を起こしてもかまわないということか」

「北米条約連合代表、お答えを」

「戦争を行うな、とは一言も言っておりませんが」

一瞬で、議場は騒がしくなった。

事務総長は懐から笛を取り出しものすごい大音量で吹いた。

「静粛に」

その行動で、積り行く埃の音でも聞こえるような静けさが戻った。

「それともう一つ。先入特権とは、いかなるものになるのですか」

日本皇国は、再び尋ねる。

「先に建物など、国籍が明らかに分かるものを建造したものが、その周囲の土地とともにと自国の領土として宣言できるものとするための権利です。もちろん、この権利はこれから宇宙分野へ進出してくるであろう国々に対しても有効です」

心なしかほくそ笑んでいるように見える。

「最後に一つ。宇宙空間で軍事衝突が起こった場合、完全に民間人のみが乗り込んでいる船も攻撃対象となりえるのでしょうか」

笑みは一瞬で消えて、真剣に答えた。

「そのようなことをすれば、全世界から逆に攻撃を受けることになりますよ。もちろん、そのようなことは、倫理上許されることではなく、また、改正後の条約にも同様の文言は取り入れられるでしょう」

ここで、いったん休憩を挟むことになり、休憩明けから再び審議、その後投票ということになった。

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