109.
「なんだっ」
エバンが衝撃波を必死に耐え抜いてから言った。
「弾着観測を開始」
機体が落ち着いてから、エバンが宣言をする。
とはいっても、現地は極めて煙たく、弾着観測は、困難極まりない状況であった。
「モスクワが燃えている……」
エバンが分かったのは、それだけだった。
さっきのが何なのかは、検討もつかないが、わかったことだけを順次連絡を始めた。
モスクワが壊滅したという話は、ほぼ同時に東京とワシントンにも知らされた。
「モーメントマグニチュード7.8相当の地震ですね。震源は地表。震度は、気象庁震度階で7を広範囲で観測しております。モスクワ中心部は、灰燼に帰したことでしょう」
気象庁の職員が、緊急の閣議の場で、テレビ参加していた。
「モスクワで地震、だと」
内務省大臣が、首を傾げる。
「どうしたんですか」
首相が、そんな内務省大臣へと声をかける。
答えたのは、気象庁だ。
「地震というのは、プレート境界型と断層型に分類されます。プレート境界型は、南海・東南海・東海地震や、東北地方太平洋沖地震のような地震をさし、断層型は兵庫県南部地震や濃尾地震のような地震をさします。このどちらも、ほとんど同じ場所で、繰り返し起きるということに特徴があります。まあ、断層型はどこでも起きておかしくないという研究もありますが。どちらにせよ、モスクワを震源とする地震は、非常に稀でしょう」
かなり昔には、地震が原因で建設途中の教会が崩壊したこともあったが、それも1400年代のはなしである。
今となっては、古の話だ。
「では、この攻撃は一体何によってもたらされたというのだ」
興奮気味に、軍務総省大臣が話す。
「おそらく、宇宙からでしょう。こうなると、気象庁の管轄外です」
「…そうか、わかった。何かあれば差し込み連絡をしてくれ」
「了解しました、首相閣下」
敬礼をして、テレビはきれた。