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10.

第11章 第3次世界大戦の萌芽・これまでのまとめ


南沙諸島も、尖閣諸島と並行して戦争の舞台となっていたが、主力戦艦は日露合同艦隊と戦っていたため、こちらはあっさりとAF側の勝利となった。

日本皇国軍艦隊の一部は、そのままAF側に残り、中国側の出方をうかがっている。

残った船で、本国へ帰港することになった。

その道中。

船の中では、こんな噂が立っていた。


「ウブスナガミは、この世界に存在しないもの」という内容だった。

実際には、この世界にちゃんと存在するものだが、その実態を見た人がいないため、そのような噂が立ったのである。


第6地区担当副長官の尼崎清助(あまがさききよすけ)は、それを聞いて笑って答えた。

「ウブスナガミは、この地球上には、確かに存在していないらしいな」

それを聞いた人たちは、よくわからないという顔をした。

清助は、空を指差した。

「ウブスナガミの本体は、宇宙にあるんだ。中国軍のスパイたちは、東京周辺の重要機関をくまなく探したが、見つからずにそのようなうわさを流したんだろうよ」

それだけ言うと、笑ってどこかへ歩いて行った。


その情報は、さまざまなルートを通って中国側へ連絡された。

「…しかし、空母重慶が拿捕されたのは、かなりの痛手だと思います」

国家主席の王東栄が、会議の席上、悩んでいた。

中国最高司令部総司令官代理、陳上鉦が、この会議には、軍部最高幹部として出席していた。

「ですが、すでに、3番艦上海、4番艦広東が就航間近です。なので、その間をどうにか過ごせれば、日本に対しても、無事に勝利することができるでしょう。そのためには、ロシア、アジア地域を仲間につける必要があり、アメリカも日本と非協力的にする必要があります」

「…アメリカは、南アフリカの所要原油基地を押さえていたな…」

国家主席は、悩んでいた。

「同盟側に、通達を頼む。アメリカをこちら側につかすために、全力を注げ」

「わかりました。それと、もうひとつありまして…」

陳が、少しどもり気味に言った。

「なんだ、申せ」

「はい。日本皇国が保有しているウブスナガミに関してです」

その言葉を聴いたとたん、会議室にいた全員がどよめいた。

「ウブスナガミは、日本本土にはありません」

「どういうことだ。日本皇国はうそをついていたということか?」

「そういうことではありません。確かに、日本皇国はウブスナガミを開発、運営していますが、それは宇宙空間上での話です」

「ならば、宇宙空間で破壊すればいいのだな」

陳は、そう言って一礼した。

「その通りでございます。そして、宇宙条約に基づき交渉することは可能です」

「そんな面倒なことをする暇はない。外道は、すぐさま誅殺すべし」

国家主席は、親指を下にして何度も振った。

「分かりました。では、そのように手配いたします」

陳は、一礼してから部屋を出た。


アメリカ側は、アフリカ南部の主要原油製造地をすべて押さえ、どうにか経済的に成り立っていた。

「条約連合として発展を続けている我が国は、やっと石油が手に入った…」

アメリカ大統領とカナダの大統領が、話し合っていた。

条約で連合国家となってから、こうして二人だけで話し合うことがよくあるのだった。

「自給率が100%になりましたが、しかし、経済は今なお困窮の中にあります。失業率は2割を超え、暴動が多発しています」

「…国債を買ってくれそうな国はあるのか?」

「南米地域は、独自の経済共同体を形成し、アジア地域は、中国を頭とする同盟国側か、日本を頭とする協定国側に完全に2分されています。アフリカ南部はどうにか親米ですが、国債を買ってくれるほど金銭的余裕はありません。北部地域は親欧的で同盟側についています」

「オセアニア地域は…」

「彼らは、現在協定側に属しています。ちなみに、ヨーロッパ地域は、同盟国側についています」

「まとめておこう。いろいろとややこしい」

そういって、アメリカ大統領は、紙を取り出し、単純な世界地図を描いた。

「まず、日本地域。日本本国を筆頭とする協定側だな。それと、南朝鮮も協定側と。アジア諸地域は、基本的に日本サイドだな」

「例外は、中国を筆頭とする同盟国です。インドと北朝鮮が同盟国サイドについてます」

「オセアニア地域は、オーストラリアとニュージーランドの協定を中心として、相互協約を結んでいる。さらに、日本側とも協約を結んでおり、相互安全保障協約となっているか…」

「南アフリカは、条約連合の支配下にはありますが、それも不安定なものです。北アフリカは、確実にヨーロッパサイドなので、同盟国側となります。後忘れてはいけないのはロシアですね」

「ロシアは、日本と協定を結んでいたな。だから協定サイドと。中南米地域は?」

「彼らは、反米の共産主義国としてまとまっています。しかし、親米派もいることはいますので、彼らを上手に指導をすれば、中南米は落とせるでしょう」

「問題は、中印欧の同盟国と日亜露の協定国か。われわれ条約連合が入る隙間はどこにある?」

二人が考えているところに、誰かが入ってきた。

「失礼します。中華人民共和国より、使者が参られています。いかがいたしますか?」

「中国か…チベット、ウイグル、東北部がそれぞれ独立し、台湾が中華民国として再結成したあの国か…」

「ロシアとは、われわれは仲が悪いです。つくとすれば、やはりヨーロッパ側になるでしょう」

「そうか…通してくれ」

連絡した人は一礼してから、部屋を出て、その使者を連れてきた。

「中華人民共和国、駐米代表部部長補佐の上長英です」

「どうぞ、おかけください」

アメリカ大統領が、席を進めた。

しかし、彼は座らなかった。

「それで、どのような用なんでしょうか」

「今回は、わが中国に味方していただきたいと思い、参りました」

それを聞いて、不審がった。

「中国は、これまで自ら外交行動を行わないと思っていましたが」

「時は、常に動いています。われわれも、時と共に動いております」

そういって、指を組んだ。

「それで、お答えは?」

二人の大統領を目の前にしても、一切微動だにしない度胸があった。

「前向きに考えておこう。今日いえるのはそれだけだ」

大統領はそれだけ言うと、帰らせた。


再び二人きりになった部屋で、大統領同士が話し合った。

「議会に諮る必要がありますが、恐らく、これが最善な措置と思います」

しかし、アメリカ大統領は首をたてに振らなかった。

「何か裏があると思う。議会に諮問する前に、CIAに調べさせよう。中国は、ここ最近宇宙開発に力を注いでいる。月面基地も作ろうとしているらしいからな。有人飛行を成功させた日本皇国とともに、注目すべき国のひとつだ」

そういうと、秘書を呼びつけた。

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