108.
エバン中尉に詳しくはいわれなかったが、宇宙軍が用意した戦略兵器が、実戦で初めて使用されるらしい。
「こちらエバン、目標へ到達。いつでも可」
「ライトメア了解。MSK2200に発射」
「エバン了解、MSK2200以降に弾着捜査に入ります」
「ライトメア了解」
MSKは、モスクワ標準時のことを言って、協定世界時UTCから4時間進ませた標準時の一つである。
日本からみれば、5時間ほど遅いため、MSK2200は翌日JST0300になる。
エバンが指定された座標付近では、誰もいなかった。
空戦の中心点からは100kmほどはなれていて、ちょうど下には戦車部隊もいる。
「こんなところのどこに、何を落とすと言うんだろ」
「さあな、俺も知らねえな。ただ、俺たちは与えられた命令を一つずつこなしていくだけさ」
「まあな」
エバンとライトメアは、短距離通信によって、会話をしていた。
だいたい50mから100m程度しか離れれないが、そのぎりぎりのラインにいた。
「あと30秒」
ライトメアの機体はエバンからみて約100m上空の左後ろを飛んでいた。
一方のエバンの機体は、いまだ無事な僚機と共に、指定ポイントの付近を失速しないぎりぎりの速度で飛んでいた。
「15秒」
秒数のカウントにも、自然と力が入る。
「発射!」
ライトメアの言葉と同時に、光り輝く一筋の光が、エバン達の50kmほど遠くを貫いた。
それは上空10km地点で散らばると、細かい物が地表へと到達する。
直後、衝撃波がエバン達を襲った。