107.
欧州連盟側の航空機は、日本皇国・ロシア空軍の連合に劣勢に立たされていた。
「なんてこったい。これじゃ、奴らのいい的じゃないか」
航空機部隊の一個小隊の一つ、小隊長のエバン・テラット中尉がグチった。
どんどんと数が減らし続けている仲間の機体を見ながら、僚機に指示する。
「上空から距離を取り、一気に片を付けるぞ」
「了解」
「了解」
1個小隊3機編成だから、2機の僚機をつれて、急上昇をする。
直後、エバン中尉達がいたところに、火線が通り過ぎる。
「危なかったな」
それから数十秒で積んでいる機体のエンジンの上限高度である1万3000メートルまできたところで、水平になる。
そのタイミングで、宇宙軍から連絡が入る。
「大変そうだな」
「うるせえ、こっちは仕事してるだけだ」
それは、エバンの同期になる、宇宙軍航空部隊小隊長のライトメア・カルカス中尉からだった。
雑音がわずかに入っているが、超長波で音声を送信しているために、ジャミングを受けていない。
ただし、わずかでも障害物があれば、その音声は全く聞こえない。
「いや、こっちも手伝ってやろうと言うことじゃないんだ。宇宙軍の総司令部からの通達なわけ」
「総司令部から?」
「そうさ。ただ、これから伝えることは、お前たちだけの指令だそうだ」
「また妙な指令だな」
エバン中尉は空軍に所属している。
だから、通常は空軍の総司令部、または空軍に所属している司令官から指令がくる。
そのため、宇宙軍の、しかも総司令部という最上位の軍令機関からの指令であるならば、通常はありえないところからの指令だと言うことだ。
「で、そんなところから、どんな内容の指令だ」
エバン中尉が、ライトメア中尉に尋ねる。
「弾着を見てほしいだと」