102.
欧州戦車部隊は、ドンドンと進撃を行い、あの爆撃地点から100kmほど通り過ぎた。
「敵戦闘機接近」
自動音声で、専用指揮車内でアロイス中将はそれを聞いた。
「やっと来なさったか。防空網へ連絡を。宇宙軍や空軍は」
「すでに展開済みです」
副官のパンス少将がすかさず答える。
「では、我々は速度を落とすことにしよう。巻き込まれるわけにはいかないからな。伝令、全戦車部隊へ通達。速度、半減」
「了解、全戦車へ通達。速度を半減せよ。上空では、敵と空戦が行われている。上空に警戒せよ」
伝令の言葉を聞きながら、アロイス中将は、満足げにうなづいた。
「ではパンス少将。それに他の参謀諸君。君たちの知恵を借りたい」
アロイス中将が幕僚全員を集めると、目の前の机に紙の地図を広げた。
「これは、20万分の1の縮尺の地図だ。これによれば、ここからモスクワ中心部まで約300kmといったところだ。分厚い防空陣地があるため、我々は援護なしに突撃をかけることとなるだろう。また、モスクワに近づけば近づくほど、戦力は漸減していき、最終的にはどうしようもないほど弱まるであろう。それを避けるためには、どのようにすればいいだろうか」
それは、彼らの喫緊の課題であった。
それと同時に、守る側であるロシア側も、苦慮しているところであった。