101.
欧州軍は、順調に、妨害されることなく進撃を続けていた。
「このままだったら、楽なんだが」
欧州軍戦車部隊司令官のアロイス・マハール陸軍中将が、だだっ広い草原を見回しながら、専用指揮車の中から呟いた。
今は、今回の進攻作戦においての司令官として、欧州軍の戦車部隊の総指揮を執っている。
「そうはいっても、必ずや妨害はあるでしょう。特にロシアの陸軍とともに、日本皇国の宇宙軍と空軍は、我々の天敵です」
アロイス中将に話しているのは、副官のパンス・ガロイヤ陸軍少将だ。
すでに欧州軍空軍が、哨戒にあたりながら、宇宙軍と連携して敵方を叩いている。
だが、間違いなくそれでは足りないだろう。
「パンス少将、それは違う。我々は天敵はいないのだ。居るのは、向かってくる風だけだよ」
アロイス中将はそう言って、パンス少将に言い返す。
「見てみよ。いまだに、我々の邪魔をするものはいないではないか。我々の敵と言えば、風だけではないか」
「しかしながらアロイス中将閣下、油断はしてはなりません。我々がこちらから突撃をかけていることは、当然日本皇国らも知っているはず。さらには、北米条約連合も皇国軍らとともにするといいます。我々は三次元的に行動をしなければ、負けてしまうでしょう」
パンス少将は、アロイス中将にそう言うと、指揮車の中にある画面をじっと見つめた。
そこには、それぞれの部隊の大まかな配置図とともに、地形図、上空のレーダー図などが載っていた。
「さて、敵はどこから来るかな」
アロイス中将は、パンス少将からわずかに遅れてそれらの図を見ながら言った。