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9.

第10章 尖閣諸島の戦い(3)


30分ほどすると、大局が決まっていた。

だが、いまだに中国の駆逐艦は1000m以内には入っていなかった。

「何をする気だ?」

島から1800m離れたところで、船は止まっていた。

「…島というよりかは、岩だな。名前もそうなってるし」

駆逐艦がいるのは、尖閣諸島のひとつの島である、沖ノ南岩だった。

「本艦隊のうち、空母は?」

「大型空母が1隻のみ。ロシアが保有しているものです。日本側は、現在、大和超級空母を建造中です」

金内がきいたことに対して、天栄はすばやく答えた。

「その空母の艦上艇は?」

「攻撃ヘリコプター3隻、爆撃機15機、水雷機3機ですね。あとは、零戦改30機ほどあるという情報になっています」

金内は、直接ロシア側の艦長に連絡を取った。


中国側は、今やB作戦の実施の返答待ちだった。

「…本国の判断は?」

「あと、数秒程お待ちください」

30秒ほどすると、連絡が入った。

「入電しました。B作戦、実施許可が下りました。相手が気付かないうちに、行動をしろとのことです」

「わかった。では、電波封鎖解除。通常連絡帯で、『無事を確認する。連絡を乞う』と送信」

「了解」

長官は、艦長と話をする間もなく次々と指示を飛ばした。


日本側は、その情報をすぐに受信していた。

「ウブスナガミによれば、艦隊が始動準備を再び始めたとのことです」

天栄が、すぐに金内に連絡を入れた。

「空母から、爆撃機を飛ばしてもらう。折り返し連絡を要求してくれ」

「わかりました」

天栄はそれを聞いてすぐにロシア側に連絡を入れた。

「…B作戦。もしやとは思うが…」

金内は、手を組んで考え続けた。


海戦の方はあっさりと決着がついたが、しかし、別動隊によって島へと、戦場は動きつつあった。


拿捕した中国海軍の艦隊群は、一切語らなかった。

「当然だろう。自国の作戦をぺらぺらと語るのは、単なる阿呆のすることだ」

金内が、艦橋からその光景を見ていた。

だが、天栄はいまだに戦闘指揮室にいた。

突然、金内の電話が鳴った。

「長官、敵が1000m以内に入りました。ウブスナガミによれば、照準を島に向けているそうです」

金内は指示を出した。

「最も近い船は?」

「ロシア海防艦、『ツァーズム』です」

天栄の報告を聞いて、金内が返した。

「海防艦はいかんな。速度が遅すぎる」

「しかし、距離は1200です。後方200地点には、日本皇国海軍巡洋戦艦『板橋』が控えています」

金内は数瞬考えてから言った。

「ロシア空母から、艦上機を発射してもらう。同時に、ツァーズム・板橋両艦とも、当該海域へ急いで向かってもらう。全速力だ」

「了解」

天栄からの連絡は、そこでいったん途切れた。


ロシア側の空母から、艦上機15機が連続発艦したのは、その直後だった。

「ウブスナガミから通達。左5機、右5機、中央5機に分散。それぞれ、5機範囲内のみ電波封鎖解除し、最低出力で行動すること。母船などに対しては非常事態時以外連絡をしないことを連絡してきた」

艦上機部隊長が、全機に通達し、最後に一言付け加えた。

「武運を祈っている、以上だ」

艦上機は、それぞれ答礼すると、すでに定められた編成部隊へと散って行った。


中国側は、すでに戦闘を放棄しており、残った船は島の周囲の2隻だけだった。

「本国側からは、無線封止を命じてきてます」

船長は、たがいに連絡を取り合っていた。

「分かっています。これよりB作戦を本格的に開始します」

そして、互いに敬礼をしてから、無線機能を完全に停止した。


ウブスナガミは、すぐにそれを察知し、最後の無線連絡をそのまま天栄へ転送した。

金内は、天栄からの報告を聞いて、すぐに答えた。

「わかった。では、本国へ連絡。「本艦隊ハコレヨリ帰港ス。受ケ入レ準備ヲ乞ウ」。なお、帰港地は、現在の燃料を鑑みて台湾『蘇澳商港』で給油後、そのまま待機。AFに出向している皇国海軍軍艦とともに、母校へ帰還するものとする」

「了解」

天栄は、それだけ返事をすると、すぐに海軍省へとその旨、伝達した。


中国側、島攻撃艦2隻は、東西に分かれて、島を取り囲んでいた。

「発射準備、整いました」

伝令によって伝えられる情報に、いちいちうなづいている艦長。

「では、攻撃を行う。方向、風向き、すべてを再確認後、即発射せよ」

「了解しました」

伝令は、即座に返送する。


空母からの艦上機が現場に到着したのは、その調節が終わった時だった。

発射直前、秒読み段階に入った時点で、航空隊は爆撃を始めた。

「爆弾倉、解放」

一瞬、振動が来た後、一気に機体が軽くなる。

ふわっとしたような感覚。

すぐ下では、無線超誘導精密弾が、その威力を見せ付けていた。

中国軍艦からミサイルが発射されると同時に、誘導弾が着弾した。


瞬時に、火だるまになり、薄青色の炎が軍艦を突き破った。

それは、太陽から噴き出すコロナのようだった。

同時に両側からそれは起こったが、しかし、B作戦の神髄は達成されていた。


艦上機が、全機戻ってくるときには、艦隊は港へ入りつつあった。

「…沖ノ南岩が爆破された」

金内は、衛星写真と照らし合わせて、そう判断を下した。

「B作戦というのは、爆破ということだったのでしょう。すでに、その事実は本国へ送付済みです」

「…海軍省からは?」

「軍務総省の会議待ちとの連絡です」

天栄が金内からの質問に、瞬時に回答する。

「そうか…では、現時点をもって、尖閣諸島海戦を終結したものと宣言する。記録、皇紀2698年11月2日午前11時38分、発令者皇国海軍旗艦船長兼第6地区担当長官、金内碧」

「本国に送付、完了しました」

そして、艦隊は台湾独立共和国海軍へ移動した。

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