第1話 Is this a murder case?
氷川警察署 霊安室
1人の体格の大きい刑事が死体を見つめている。
そこにあった死体は本日警察署に運ばれてきた死体だ。
遺体に外傷はなく、死因は不明。普通に考えたら病死か突然死のはずなのだが、検死の結果では死因が特定できず、普通ならそのまま葬儀屋が運ばれていくのが普通だろう。
しかし、今回の遺体は勝手が違う。司法解剖に回されたのだ。司法解剖は本来事件性が認められた際、刑事事件の処理を目的として行うものだ。
事件性があるかどうかもわからないのに司法解剖を行うのは可能性がないとは言えないが珍しいケースである。
今回俺が担当になったのだが、実際にどこに事件性があるのかさっぱりわからなかった。
この道20年の俺でも、今回の件は頭をかしげるほどだ。
そこへ、一人の女が入ってきた。
外見は20代後半、というより実年齢は27歳。背は低く、セミロングの髪に、きっちりしたスーツの恰好をした新米刑事だ。
「あ、田所刑事、お疲れ様です。」
「ようめぐみちゃん。お疲れ。上は何と言ってた?」
「もう、ちゃん付けで呼ばないでくださいよ。これでも一応私も刑事なんですからね。っと、やはり捜査本部が敷かれるということです。殺人事件として。」
「本当かい?誰が決めたんだ?」
「さぁ、そこまでは私にも。とにかく、捜査会議が始まるとのことなので早く来てほしいとのことです。」
「んー。」
田所は首を傾げた。
「それにしても上はよく殺人事件だってわかったな。」
「ええ、なんでも、現場を一目で見た瞬間に殺人事件だと分かったとか。」
「え・・・」
いきなりの言葉に声が失った。
「いくらなんでも一目で見ただけでどうして殺人だとわかった?
一応俺も現場を見に行ったが、一目でわかるほどではなかったぞ。」
「さぁ、私も今日知ったばかりですのでそこについてはなんとも。あとで捜査会議で聞けばいいんじゃないですか?」
当然といえば当然だなという感じだ。
「よし、じゃ行くか。」
そう言って田所刑事は手で拝み一礼をしてから遺体の顔に白い布をかぶせる。そうして二人で霊安室を出て捜査本部へと向かった。
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氷川警察署
刑事課対策本部会議室