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プロローグ

死んだ後の人間はどこへ行くのだろうか。


ある人は死後幽霊となり、人知れずこの世をさまよっているといったもの

ある人は生前の行いが正しければ極楽浄土へ行き、行いが悪ければ地獄に落ちるといったもの。

ある人は新しい生き物へと転生し、新たな人生を迎えるといったもの。

ある人は死後の世界は無であり、永遠の空白に閉ざされるといったもの。

ある人は永遠と同じ人生を繰り返し、延々とループし続けるといったもの


答えはわからない。わかるはずがない。


なぜなら、誰もが死後の世界を何も知らない。

誰も死後の世界を経験したことがない。

死後の世界があるのかさえ知らない。

死後人間はどうなっていくのか、まだ誰も答えを出したことはない。



故に、人間は死を恐れる。死後の世界に確証がないから、人間は生にすがる。

そのこと自体、悪いこととは思っていない。むしろ、人間としてそれは当たり前の話だからだ。


だが、それでも人はいつか老い、死んでいく。

それが早いか遅いかだけの事。

死んだ後の事なんか、自分は全く考えていなかった。


そう、あの日、自分が死ぬまでは。



そう 私は確かに死んだのだ

あの日、普段と変わらない生活を送っていたのだ

朝早く起きて いつも通り朝飯を食べて普段通りの時間に出社し、なじみの店で同じ定食を食べ、定時きっかりに仕事を上がり、いつもと同じ電車に乗って帰りいつもとほとんど変わらない時間に帰ってきて、毎週見ているバラエティ番組を見て好物のカレーを作り、シャワーを浴びて普段と同じ23時に就寝した。


いたって普通のライフスタイルだ。特別なにか起こしたわけでもないし、別に具合が悪いという話は最近聞いていない。


なのに、自分には次の日は来なかった。いつ死んだのかもわからず、どうやって死んだのかさえわからなかった。


そう 僕は明日が来る前に死んでいたのだ。


ではなぜ僕はこうしてしゃべっているのか?実は僕にもわからない。


気が付いてみると、この真っ黒な空間にいた。

何をすることもできず、体のどこも動かせず、視覚化された情報でのみでしか認識できず、生物の気配、気温、感覚、この世のすべてが奪われたような感覚になっていた。


故に何もできず、何も感じることなく、永遠と思える時間をたださまよっている感覚。

いったいどれだけこの中に閉じ込められている?時間の感覚も麻痺するほど恐ろしく長い時間。


自分はただこの空間の中に延々と閉じ込められているような感覚でしかなかった。


もちろん、おなかがすいた、眠い、ムラムラする。そういった生理現象は全く起きない。まるで自分の体でないような感覚だ。


僕は一度頭の中で秒数を数えてみた。


何もすることがないので、今どのくらいたっているか数えてみた。


気づいてみたら、回数は100万を超えていた。


当然、面倒になったこともあって途中で大雑把にはなったが、最低でも12日前後にはなっているだろう。


それでもやはり起きない。目が覚めない。


ということは、自分はやっぱり死んでしまった。と感じていたのだ。


だが不思議と長い時間にいるのにもかかわらず恐怖心や絶望感が感じられないのは、自分が人間としての概念を喪失してしまったからだろう。と、自分で考えていた。


これが死の世界。やはり何もない空間か。


これから永遠とこの場所にいなければならないのかと考えていると、頭の中に声が聞こえてきた。


というより、頭がどこにあるのかさえ分からない。どこから聞こえてくるかもわからないはずなのに。


「めずらしいな。このような場所に人間が漂っているとは。」


ん?このような場所って、死後の世界じゃないのか?


「正確には違うが、死者も正者も本来なら入ってこれない場所だ。故にここに迷い込んでくる人間なぞ初めて見たぞ。」


どうやら自分の頭で話している言葉が相手に伝わるらしいな。ということは俺は死んでないってことか。

というよりあんたは何者だ?


「私には名はない。だが、世界を監視するものとしての役割を持っている。もちろん、この無間も私が管理している。」


管理している?だったら、なぜここまで俺を放っておいた?なぜおれはここにいるんだ?


「いやわからんが、どういった原理でここへ入ってくるのか見当もつかぬ。本来ならば、いかなることがあろうと微粒子でさえはいってこない。それにここの世界には有限という概念が存在しない。ゆえに今回たまたま私が見つけただけにすぎぬ。」


なるほど、では、俺はまだ死んでいない可能性があるということか。それなら早く出してほしいものだ。まだ人生終わりにしたくないしな。


「ああ、早急に出て行ってもらおうといいたいところだがな、残念ながらここに入った物はお前が初めてだ。よってここをどう出るかなど知らぬ。」


そんな・・・俺は一生ここにとどまり続けるのか・・・・本来ならもやっとする感覚が生まれるかもだけど、残念ながら何も感情が沸き上がりもしない。やっぱり俺は・・・


といったことを考えてる間、予想外の事が起きた。


いきなり視界が霧散し、ぷつりと糸が切れたかのようにいきなり意識が消失した。











次に意識が戻ったのは、公園のベンチだった。朝日がまぶしい。ということは、俺は無事に生きていたということだ。


俺は一旦大きく息を吸ってみる 


スーハー スーハー

よし、呼吸はOK


その次に体を動かしてみる。ラジオ体操第五

まずは両手を後ろに広げてー はい 1,2,3,4


うん 体の感覚も問題ない。よし、大丈夫そうだ。


やっぱり死んではいなかったんだな。よし。


それにしてもここはどこだ?見覚えが一切ない


あたりを見回してみると、子供たちが遊んでいた。砂浜でお城でも作っているのだろう。結構クオリティ高いな。


そこへ母親が来た。子供に対して叱っているのかどうなのか聞いてみると、



「--------------」


ん?なんて言ってるのかわからない。


近くにいた疲れ果てたようなサラリーマンの2人の会話を聞いてみると、


「--------------」


やっぱりそうだ。なんて言ってるかわからない。


ひょっとしたら日本語ではないのかもしれない。


あたりを見回してみると、公園のすぐ近くに見えるビルには見慣れた文字が並んでいる。

漢字のみで。意味が一切わからない。


あたりを見回してみると、どの言葉も読めない 漢字が使われているのは確かだが、どうにも読むことはできない。


ただ、この文字は見たことがある。中国語だ。


ということはここはつまり・・・


一旦公園を出てみた。しかし、日本人と似ている顔はたくさんいたが、やはり話は一切通じなかった。あたりの看板や標識もすべて中国語で書かれていた。



俺はなぜか中国にいた。



























とある一室にて


ではニュースです。

4月14日午後2時ごろ、東京都氷川区のアパートの一室で男性の遺体が発見されました。

被害者の名は一木景ひとつぎ かげる26歳 サラリーマン。

欠勤が続いていたため職場関係者とアパートの管理人が部屋に向かったところ、死後一か月が経過した遺体を発見したということです。

氷川警察署の見解では遺体に抵抗や損傷がないことや、遺書などの類がみつかっていないこともあり、事件と病死の両面で捜査をする方針を決めました。


えーそれでは次のニュースです。



「これから始まる。ショータイムの時間だ」

フッとほほえみを浮かべながら彼はテレビを消し部屋を出て行った。

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