投稿テスト
「さて」
勢いに任せてユーザー登録してみたものの、自分に小説なんて書けるのだろうか。
私、白沢慧は自室でノートパソコンに向かってそう考えていた。そもそもこのパソコンで小説を書こうなんて思うのがおかしい。というのもこのパソコンのキーボードは一部反応しないキーが存在するのだ。それが「よ」と「わ」と「る」のキーがまったく反応してくれない。「よ」と「わ」の位置は別にかまわないのだが、「る」の位置は句点の位置である。そのためよく使うのだ。ここが反応してくれないために私は死ぬほどイライラしている。
なんなんだよ。私が一体何をしたというのだ。
あーあ。小説なんてやめだ、やめ。つまらんことに時間を消費してしまった。しかしキーボードが反応しないのはレポート作成するときにも厄介だな。この際思い切って新しいパソコンを買ってしまおうか。そう思い私は家電量販店へと出かけた。このご時勢、店なんか行かなくてもアマゾンで何でも買えてしまうのだが、やはり実際に商品を見ないと分からないことも多い。まあ、結局品定めした後アマゾンで買ってしまうのだが。
家電量販店に行く道すがら、私は小説について考え始めた。私は小説を読むのが好きだ。読んだ冊数こそ少ないものの、私は今まで読んできた小説が、その小説を書いた作家の思考が好きだった。もし、私が先程登録した小説投稿サイトで彼らのような小説が書けたなら、それを誰かが読んで何かを思ってくれたなら。それほど幸せなことは無いだろう。しかし私は小説を書いたことなど無い。大学のレポートでさえ苦戦していた人間だ。そんな私が小説など書けるわけがない。
考えている間に目的の家電量販店にたどり着いた。家電量販店。先程考えていたように今ではシェアをすべてアマゾンにもっていかれているためあまり活気がないように見える。そういえば大学の講義で今家電量販店は住宅設備に力を入れていると聞いたな。関係は無いが。三階のパソコン売り場に行き、パソコンを眺めていると店員が話しかけてきた。機能やらスペックやら説明してくれたがパソコン素人である私にはさっぱりわからなかった。店員にリストアップしてもらったものから気に入ったパソコンをアマゾンと価格比較して、アマゾンで買うことに決めた。消費者である私にとって家電量販店はそういう役割でしかない。
帰宅すると親しい友人から手紙が届いていた。友人とはよく文通をしている。最近ではSNSという便利なものがあるが、手紙というアナログ手段で誰かと意思疎通するのもなかなか楽しい。切手代が高いが。おっと脱線した。手紙の封を切って目を通す。そこには友人の近況が綴られていた。どうやら彼はアニメーション作成に興味を持ったようで、今は絵を描いているそうだ。彼は絵を描いたことはあまりなく苦戦しているみたいだが、文面から楽しさも感じられた。
ああ、そうか。私は思った。何事もやってみないとわからないものだ。最初からできないと思いやらないことはすごくもったいない。誰しも始めは下手くそなものだ。繰り返しやって、そこで初めて評価できるようなレベルになるものだ。
私の中に眠っていた心が動きだす。書きたい。やってみたい。そこにはどんなものが待っているのだろうか。読み手ではなく書き手としてどういう景色が見られるのだろうか。数年後の自分はこの文章を見てどう思うのだろうか。
そう心を躍らせながらタイピングをする。壊れたキーボードでも構わない。たまに反応してくれるときを気長に待とう。今はとにかく書くんだ。きっと知らない世界が待っている。ここから始まるんだ。