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三劇目 「ミノタウロスとはじめの一歩」

「せ、背中に?も、紋章?」

マジかよ。

自分で確認できないのがなんとも歯がゆく、そして疑わざるを得ない。

俺が上位0.1%のスキルオーナーなんて。

「実感無いけど・・・」

「スキルによって発動条件が違うニャ。だから私にも分かんないニャ・・・」

「じゃあ、・・・」

俺は恐怖から言葉に詰まっているとリリラルが

「実践しかないニャ」と後を押した。

「大丈夫ニャッッ!!S級ハイエストスキルにゃ!!自分を信じるニャッ!!」

そうは言っても使い方が分からないなんて、発動しなかったらどうすんだよ。



ちょー恐ぇじゃん。



その時俺らは、後ろの影で俺らの話を聞く人影に気づく事が出来なかった。

そして俺らが気づか無いままその人影は、サッと姿を消してしまった。





俺は、リリラルが使っている劇場の小部屋に移動した。

といってもそこはやはり野外劇場。

天井などはなく、石造りの壁が辛うじてプライベートを確保していたが、その壁も所々欠けていた。


「今夜は寝て、明日仲間集めに行くニャ」

ブルマ軍曹と片翼天女の事だろう。

薄い布を敷き寝転ぶと、背中の石床はせっかく温めた身体を冷たく体を冷やす。天井の夜空の美しさが憎らしかった。

「きっと仲間になってくれるニャ」

「だと良いんだけどね」

俺は自分のスキルも把握していないが、彼女は楽観的だった。

それもそうなのかも知れない。

そんなに彼女の環境は残酷ピエロによって変えられてしまったのだ。

俺の背中を見た時は、金の糸が目の前に垂れたような心地だったのだろう。

だとしても俺は、どうすれば良い?

自分自身に実力があるとは思えないのは事実だ。

「いや」と声に出す。

そんな事考えても仕方がないと、堂々巡りの思考を一蹴する。

「にゃ?」

と俺の声にすでに寝ぼけ眼のなっていたリリラルがこっちを向いた。

「なんでもないよ。おやみす」

「おやすみニャァさ、い・・・ニャ・・・」

スピーという可愛い寝息と共に耳をクニャッとさせて掌を合わせた両手を丁寧にホッペにつけて枕代わりにしている。

俺も同じく瞼を閉じた。

だが、突然。


ズガァァァァァァァァンッッッッッッッ!!!!!!!!!!!



という凄まじい轟音が鳴り響いた。

「なんだ!?」

俺はガバッと起き上がると「ミノタウロスにゃっ!!」とリリラルが叫んだ。

「ミ、ミノタウロス!!?」

「くそっ!!!!どうしてこんなところに!!!!?」

「劇場はまだ忘却街われわれのもののはずじゃないのか!!?」

「スキルオーナーは!誰か居ないか!?」

「バカが、すでに最終戦線の奴らにやられてしまったではないか」

そんな周囲の叫び声がした。

「誰か大浴場で背中に紋章があるものを見たと言っていたぞ!?」

「何?S級ハイエストだと?」

俺は無意識に首を竦めた。

きっと俺の事だ。気がつかないで。



気がつかないで?


その時俺が転生する前の記憶が蘇ってきた。



何にも挑戦せずに逃げていた自分。

何かあるとすぐに他人のせいにしていた自分。

そして常に後悔していた自分。



あの時やっておけば良かった。



学生の時にA判定が出たのに、それを棒に振った人生は。

S級ハイエストスキルが出たがそれを使おうとしない、今の状況と瓜二つに思えた。



「ミノタウロスが近づいてくるぞ!!!」

「逃げるんだ!!!!!」

皆が逃げ惑う中、リリラルも「あいつは相手が悪いニャ」と闘争を促した。

「何言ってるリリラル?さっきまで喜んでたじゃないか」

「で、でも!!」

彼女は恐怖で顔を引きつらせていた。

今まで負けた経験と数多くの仲間を亡くした彼女には、やはり危険が目前まで迫ると反射的に反応してしまうのだろう。

「逃げるニャ!!とにかく今はっっ!!!」



ズゥゥゥゥン、ズゥゥゥゥン。



地鳴りが近づく中。

俺は両手を握り、そして近づいてくるビルほどもある巨体を直視した。

雄々しく生える日本のツノはまさしく闘牛だが、その体躯は金剛のよう隆々としていた。

日本の足で立ち、蒸気機関のように吐く鼻息は圧巻だった。


「ブフォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」


俺と目が合い興奮したのか、目を赤く光らせた。

体をそらせ天を仰ぎ、その雄叫びで周囲に自己を知らしめる。

こんな生物、倒せる訳が無い。

「はやく逃げるニャッ!!」

リリラルがまた俺の手を引っ張る。



だが。



もう。



俺は一歩踏み込み、昔の自分と決別した。



「後悔だけは二度としねええええええええええええ!!!!!!!!!!」

「ザゥっっ!!!!」



気がつくと俺は、無我夢中で走り出していた。

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