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一劇目 「忘却街の獣人少女」

俺は起き上がり周囲を見回す。

そこは朽ちた石造りの劇場、テレビで見たギリシャのコロシアムのような場所だった。所々の石柱が破壊され、壁が欠けている。空には星が降り注ぐほどに広がり、ひんやりとした風が俺の肌を撫でた。

肌。

ん?なんか俺の肌すべすべしてない?

ヒゲも生えてないし、腹も出てない。

俺は近くのガラス製のもの拾い、顔を確認する。

「わ、若い・・・」

10年以上は若返ってる。

俺は本当に異世界に転生したんだ。

「もう大丈夫そうニャね」

「うわっ!だ、誰!?」

ケモミミ?

頭に生えた耳をクルクルさせながら、獣人少女は「ほっ、よっ、とっ」と何歩か後ろに下がった。

「へへへ、良かったニャ」と屈託なく笑う。





どうやら気を失ってる俺を心配してくれていたらしい。

俺は感謝の意を表した後に、今の状況を知ろうと

「ここはどこ?」

とざっくりと質問を始めた。

「忘却街ニャ。聖王様が生きていた時はこの屋外劇場でオペラが開かれる観光が盛んな街で有名だったんだニャ。歌姫のセルフィス様は誰しもの心を癒す“スキル”を持つ”スキルオーナー”で、その美しい歌声のおかげで街はとても活気があったニャ」

ん、なんか良い話っぽい。

すると突然「しかしにゃ」と逆説接続詞を付け加えると、頭の耳をヘタッとさせしょんぼりした顔をした。

「聖王様が死んじゃった後は、みんな大混乱ニャ。街の全てを“ギルドバトル”の“勝利者特権”として取られてしまったのニャ」

「え、何の何特権?」

日本語でおk。





「ギルドバトルにゃ。知らないニャ?“代表者”が一人以上の人と仲間になって“ギルド”が出来るニャ。その代表者と代表者が戦うのが“ギルドバトル”。勝負内容は自由ニャ。勝った方は勝利者特権として、どんなものでも一つだけそのギルドの何かを手に入れられるニャ。この単純明解なルールが聖王様という指導者を失った、この国の新しい『ルール』になってしまったんニャ」

「なるほど、ギルドバトルかぁ。まさかそれでそのセルフィスさんは?」

「そうニャ。ある日突然この街に現れた“残酷ピエロ”率いる“最終戦線”というギルドに連れて行かれたニャ。今もセルフィス様は、きっと残酷ピエロに強制的に歌わされているニャ」

可哀想に、と呟いて俯く獣人少女に俺は同情を禁じ得なかった。

「残酷ピエロってそんなに強かったの?」

それにこくんと頷く。

「みんなどうしてもセルフィス様を助けたかったニャ。セルフィス様はこの街のシンボル、みんなの心の支えだったからニャ。だから、この街に居たほとんどのスキルオーナーがギルドを作ってギルドバトルに挑んでいったニャ。だけど、それが残酷ピエロの策略だったんだニャ。それからというもの、ヤツはあらゆるものをこの街から奪ったんだニャ。この街も本当は名前があったニャけど、その名前も使う事も出来なくなったニャ」

あぁ、だから忘れさられた街、忘却街か。把握。

「そしてこの街の最後のスキルオーナーを倒した時に、残酷ピエロはS級ハイエストスキルのオーナーの紋章を見せつけて来たんだニャ」

S級ハイエストスキル?オーナーの紋章?」



改めて日本語でおk。



S級ハイエストスキルは全てのスキルオーナーの上位0.1%。森羅万象に通じる力とも言われ、その身体のどこかに複雑な入れ墨が施されているにゃ」

そういって獣人少女は木の枝でマークを描く。

ぬぅ、確かに複雑だ。

「残されたのは私たちとわずかな食料、それとこの思い出の劇場だけニャ」

俺は改めて彼女の身につけているマントが、とても古く所々ほつれているのに気づいた。裸足の指先には泥がつまり、赤く擦りむけている。

そして彼女の後ろの方には、俺に警戒しているのか数人の子供と老人が物陰から様子を伺っていた。

「残酷ピエロが敢えて私たちに食料とこの地を残したのは『決心』させる為ニャ。残された人間でギルドを作って挑むか、それとも諦めて皆で死ぬか」

「・・・・・・」

「もし強ければ、この近隣街の“ブルマ軍曹”や“片翼天女”と同盟を組めるかもしれないのに」

獣人少女は耳をピンとさせながら、歯を食いしばりながら悔しさを堪える。

「まっ!考えてても仕方ないニャ。この劇場名物の大浴場でみんなで汗を流そうニャ」

そう行って、獣人少女はぴょこぴょこと歩いていく。



「こっちニャ、一緒にお風呂入ろうニャ♪」

え?いきなりの混浴フラグ?

あ、獣人少女の名前出すタイミング逃した。

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