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間章 Anthropo phobia
ひどい空腹が二人を襲っていた。一人は白衣の男性で、一人はその娘のようである。男性は黒の伸び放題の髪を後ろで纏め、眼鏡をかけている、それいがい特徴らしいものはない。娘の片耳には百合を挿しているのか――しかしもう片方の耳の有るべき場所には人間のものではない耳がある――耳は見えない。目は猛禽類を思わせる金の目だ。
「……や、やっぱりここから出て……、街へ行って何か買ってこようよ?……ね?」
少女が宥めるように言う。
「……できない……」
男が酷く枯れた声で答える。「ここから出る体力も……、いや出たとしても……。私は恐怖で死んでしまう!」